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ー空間ー151

「お前等が俺達の言うことを聞けねぇってんなら、やっぱり痛い目に遭わせてやらねぇとなんねぇようだな!」


 そう犯人は静かに言うと、雄介との距離を約三メートルまで縮めてきた。


 すると、その犯人は上着の内ポケットに手を突っ込み、次に手を出した瞬間、雄介は何か光るものが見えたような気がした。しかも蛍光灯の光で反射しているようにも思えた。


「え? な、何!?」


 雄介がそう思った頃には、犯人が持っている何かしらの武器が雄介の左腕を掠め、洋服と皮膚に軽い傷をつけていた。


 今はうまくかわしたこともあって、どうにか擦り傷程度で済んだが、もしかわしていなかったら? と思うと本当に危なかったかもしれない。


 犯人だって雄介を殺すつもりで向かってきているのだから。


 犯人は雄介にそれをかわされて舌打ちをした。そして、もう一度足を踏み込んで、雄介に向かってきた。


 その一瞬で、雄介が見た犯人の武器は鉄製のナイフではなかった。蛍光灯の光で反射しているくらいで、金属探知機でもすり抜けられるガラス製のものだった。それを加工し先端を尖らせたナイフのようなものだ。


 雄介は犯人が持っているナイフの動きを見ながら、犯人の腕を叩き、そのナイフを落とした。ナイフが床に落ちる音が機内に響き渡った。


 そして雄介は床に落ちたナイフらしきものを左手で蹴って避けた。


「これで、終わりやな……」


 雄介が優勢かと思われたが、その直後、雄介の後方から低い声が聞こえてきた。


「お前……何者だ!? サツの人間か!?」


 その声に反応して雄介は振り向くと、先ほど雄介がトイレで倒したと思っていた犯人が望の首に腕を回し、望に危害を加えようとしているのが目に入った。


 それを見た雄介は戦うのを諦めたかのように腕を下ろした。


 そう、先ほどトイレで倒したと思われた犯人に望を人質に取られてしまったのだから。


 雄介としては、あれだけのダメージを受けていれば暫くは大丈夫だと思っていたが、どうやら復活するのにそんなに時間はかからなかったようだ。


 望を犯人に人質に取られて、雄介の顔は真っ青になり、額からは汗が滲んできている。


 きっと背中にも冷たい汗が流れているだろう。


 雄介が望と犯人の姿に呆然としていたのがいけなかったのだろう。犯人から見れば、今の雄介は完全に無防備で隙がある。だから、今さっき雄介と戦っていた犯人が雄介の後ろでガラスのナイフを持ち、今にも雄介を刺そうとしていた。


「止めろ……」


 ともう一人の犯人が静止を求めた。

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