どうして、この白井という人間はそれを知ってしながら犯人のことを止めるということをしなかったのであろう。白井は警察の人間だ。それなら、どうにかしてその犯人達を捕まえようとか? ハイジャックを止めようとかというのは思わなかったのであろうか?
そこまでしなかった白井に雄介は怒りを覚えているのか、そう小さな声ではあるのだが低い声で言うのだ。
白井の方は雄介の手首に掛かっている紐をどうにかして解きながらも言い訳を始める。
「今日、僕はプライベートの事情によって、この飛行機に乗ってます。プライベートではなければ警察の人間というのは二人一組で活動はしているのですが、今日の僕は一人でしか動いていませんでしたからね。まぁ、少なくとも、二人一組で動いていたのならきっと犯人達のことを押さえていたでしょう。それに、今日はプライベートで動いているので、手錠や拳銃も持ち歩いてませんしね。ま、そういう事ですから……」
雄介はそれを聞いて大きなため息を吐く。とりあえず白井の言い訳は警察も手錠や拳銃を持っていなければただの一般人と変わらないという事を言いたかったのであろう。
「ま、とりあえず、アンタの言い訳はわかったわぁ。まぁ、この紐はとりあえずアンタに外してもらわないといけないって事やんな。まぁ、外してもらっても問題は問題ではあるんやけど……まぁ、俺は先ず望をどうにかしたいねんって、望を人質に取られておるし、望さえ助ける事が出来たなら、犯人達のこと捕まえるっていうんか、取りおさえる事は出来んのかな?」