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ー空間ー156

 もちろん、雄介の方も体を揺らされバランスを崩し、隣にいた白井の方へもたれ掛かっていた。その視線の向こうに見えた望。ふっと気付くと、望の体は通路側へと投げ出されている。これはチャンスと思った雄介はすぐに体勢を立て直し、望の手を掴んで立ち上がらせ、自分の方へと引き寄せる。


「望……大丈夫やったか?」

「あ、ああ……まぁな……」

「とりあえず、お前は白井さんの隣に座っておってな……後はもう俺が何とかするし」


 雄介はそう言うと、今まで自分が座っていた所に望を座らせた。


 とりあえず雄介は望を助けられたことに安堵すると、行動を開始する。


 今の揺れでダメージを受けたのは乗客だけではない。当然、望の隣にいた犯人の一人もダメージを受けている。しかも窓際にいたため、その窓に頭を打ち付けていたらしく、頭を押さえていた。


 だが、もう一人フロア内にいるはずの犯人の姿は見当たらなかった。


 とりあえず雄介は望の隣にいた犯人を取り押さえ、今まで自分に縛ってあった紐でその犯人の一人を後ろ手に縛り上げる。そして犯人が持っていたガラス製のナイフを取ると、望に縛ってあった紐をそれで切るのだ。


 雄介は望に縛ってあった紐を手にすると、もう一人このフロア内にいると思われる犯人を探し始める。


 すると前の方で倒れている姿が目に入った。


 多分、今の飛行機の揺れでフロア内を見回っていた犯人は、座っていた人間よりもダメージが大きかったのだろう。きっとバランスを崩し、倒れ、その場で気を失っている姿が目に入る。


「ま、このままやったら、この犯人も暫く立つことさえ無理やろうが、さっきみたく、すぐに復活されたらたまったもんじゃないしな。悪いけど……縛らせてもらうで……」

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