目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ー空間ー184

 いきなりそういう風に望に声をかけられて、雄介は首を傾げながら望の顔を見つめる。


「背中の方は痛くないのか?」

「へ? あ、ああ……背中の方な……?  ホンマはめっちゃ痛いねんけど……。入院するのはもったいないって思うとったし、だってな、望と一緒に居られるのは明後日までなんやろ?  それやったら入院しとる時間やっておしいやんか、せやから、入院するのは辞めておいたって訳なんや」


 雄介はそう笑顔で言うのだけど、望の方は頭を抱えてまで息を吐く。


「やーっぱり……お前は正真正銘の馬鹿だなっ! 何で医者の言う事聞かねぇんだよ……そりゃ、あんだけ傷を負ってりゃあ痛いだろうよ。そんでもって、何でちゃんと治療受けて来ないんだよ!」


 先程まで心配そうな表情をしていたのが嘘みたいに、表情を変えて雄介のその言葉に怒り出す望。


「しゃーないやんか……」

「仕方ないも何でも、そこ言い訳するとこじゃないからっ!」


 望はその言葉に再び息を吐くと、


「……とりあえず! 明日は緊急以外は病院は休みなんだから、大人しく寝てるんだからなっ!」


 そう言うと望は雄介から視線を外し、望自ら雄介の体を正面から抱き締め、瞳を閉じる。


 雄介の方は望の行動に驚きながらも微笑み、望の体を何も言わずに抱きしめ返すのだ。


 そして二人はそのまま夢の中へと落ちていくのだった。



 次の朝、二人が目を覚ましたのは完全に日が昇って正午手前だ。


 望の横手にあるカーテンの隙間から太陽が望のことを起こす。


 目を擦りながら起きた望はキョロキョロと周りを見渡していると、雄介の方も目を覚ましたのか。望を見つけると笑顔になって、


「おはよー、望……」


 と朝から語尾にハートマークが付きそうな勢いで朝の挨拶をしてくる雄介。


 望の心の中ではきっと「朝からテンションが高い奴だなぁ」とでも思っていたのであろう。 だが望はすぐに仕事モードになってしまったのか、


「風呂はどこにあるんだ?」


 そう雄介に聞いていた。


「……風呂か?」


 雄介はそう言うとベッドの上で半身だけを起こして、


「下の階の階段の奥の方にあんで……なんや、朝から俺と一緒に風呂に入りた……」


 そう雄介が最後まで言わないうちに望は真面目な顔をして、手で雄介の顔を押さえ、

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?