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ー空間ー199

 今まで、いい雰囲気だったのにも関わらず急にそんな事を言うもんなのだから、そこは頭を抱えたくなる所だろう。


「何言うてんねん。そないな事は後でもええやんか。どうせ、体を動かしてしまうんやし、包帯とかって取れてまうやろうしな。そういうのは終わってからでええんと違う?」

「え? あ、そ、そうだよな。確かに雄介の言う通りなのかも。悪かった……今のは確かに口を挟んだ俺が悪いしさ。だけど、本当に大丈夫なのか?」

「そんなに心配せんでも、大丈夫やって。ほなら、逆に痛み感じんようにしてや」


 雄介は望の手を取ると笑顔で望の事を見つめる。


 いよいよ望が動く番となってきたのかと思うと、望の方はまだ動けないようだ。


 さっきの勢いでだったらいけていたのかもしれないのだが、ちょっと望の中では冷めてしまってきているのかもしれない。


「……望から来ないんやったら、俺から行くしな」

「そこはぜってぇ認めねぇ!」


 望はそう今日は頑なにそう言い続けるのだ。


「絶対に今日は動くんじゃねぇぞ!」


 そうまた念を押すかのように言い張る望。


 だが、そう言うわりにはなかなか動事が出来ないのが望だ。


 望の行動に雄介は焦れったくなったのか、今日一日部屋着として着ていたスウェットの上着を脱ぎ始める。


 すると、そこにはまだ痛々しそうな感じで上半身には包帯が巻かれていた。


 それは、まさに昨日のハイジャック事件で雄介が負った傷だ。


 だが、一体、雄介は今回の事件でどれだけの傷を負ったのであろうか。


 確かに事件の後に望は直ぐに雄介の背中の応急処置位はしていたのだが、本当にあの時は無我夢中でどれくらいの傷だったのかさえ覚えてはいない。というのか、もう自分が生きるか? 死ぬか? の状態で頭が真っ白な状態で雄介の処置をしていたのだから忘れているのかもしれないのだが。


 だが望は今はそんな事を考えている場合ではないと思ったのか、望は頭を振ると自分も服を脱ぎ再び雄介へと近付くと唇を重ねる。

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