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ー空間ー227

 もうちょっとだけ望は雄介に抱かれていたいと思ったのかもしれないのだが、雄介の方もきっと、もうこれ以上抱き締めていたら別れる時に辛くなると思ったのだろう。


「あ、それとな……」


 雄介はそう言いながら右側にあるズボンのポケットの中を漁ると、


「これ、俺からのクリスマスプレゼントやぁ。まだ、全然早いのかもしれへんけど、クリスマスの日に会えるかどうかっていうのが分からへんやろ? せやからなぁ」

「あ、ああ……」


 望は雄介から渡された小さな紙袋を見つめる。


 その小さな紙袋は雄介が家からずっとポケットの中にしまってきたのか、暖かく感じる。いや、もしかしたら暖かいのは雄介の温もりかもしれないのだが、温かさも感じるのであろう。しかもずっとそれを渡すタイミングを考えていたのか、それで雄介はきっと確認するかのように握っていたのだろう。紙はもうクシャクシャになっていた。


 雄介はそのプレゼントを包むことは頼まなかったのか、もう中身を見なくても中身の物が形を作ってしまっている。


「悪い、俺の方は何も用意してなくて……」

「気にすんなや。それ、大事にしてくれたらええからな」


 雄介は左手に付けている自分用の革製のリングを見せながら言うのだ。


「これな、名前も入れてもらったんや……望には俺の名前……俺のには望の名前をな。何も無いよりかは何か物としてあった方が相手のこと思い出しやすいやろ? 確かに東京と大阪じゃあ、距離はあんねんけど、何となくやけど、このリングで繋がっているような感じせぇへん?」

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