やっと望も落ち着いてきたのだろう。ベッドを降りようとしていた雄介の手を取り、
「雄介……さっきはゴメン……」
そう小さな声で言ったが、
「分かってくれたんだったらええよ。俺の方は気にしてへんからな。ほな、行くで!」
雄介は望の手を引くと、望を立ち上がらせる。
「ああ……」
望は雄介に向かい笑顔を向けると立ち上がり、雄介と一緒に下へ向かうのだ。
雄介たちもテーブルに着くと、和也が、
「遅かったんじゃねぇのか? まさか、朝から勃っちまってやってきたとか言うんじゃねぇだろうな?」
「流石にそんな短い時間でできる訳ないやんか……」
「ま、そうだけどよー、お前らならできなくもないかな? って思ってさ……」
「それに、お前らがいたんじゃできる訳ないやろ?」
雄介はパンにバターを塗りながら言う。
「じゃあ、いなかったらやってたのかよー」
「多分な……」
雄介はそう答えると、パンにかじりつく。
「ま、いーや……。望! 昨日頼んでおいたことやっておいてくれたか?」
「あ、悪ぃ……まだだ……」
望はいつもより暗い声で答える。
そこに気付かない和也ではない。それに気付いた和也は、パンにバターを塗りながら首を傾げる。
「あ、あー! それ、俺がやっておいたわぁ」
「雄介がっ?」
「おう……。望の部屋にパソコンあるやろ? いい所はピックアップしといたし、プリントアウトもしといたし、後で持ってくるなぁ」
「ん……あ、いいよ……」
和也は小さな声で答える。
「へ? 何か言うたか?」
「だから、持ってこなくていいよ……ってな。俺たちはさ……朝食終えたらすぐに帰るし、それに、今日はせっかくの休みだろ? だから、デートにでも行きたいしな。 後は雄介たちに任せるよ……勝手に決めて、予約だけしといてくれたらいいしさ」
「あ、ああ、そういうことな」
「んじゃあ、よろしく」
和也は笑顔で言うと、雄介も笑顔を返す。
裕実も和也からのサインに気付いたのか、和也とのアイコンタクトに気付き、和也に向かい笑顔を向けるのだ。