雄介は伸びをしながら望の顔をチラリと覗くが、返事がない。
「じゃあ、片付け終わったし、俺たちは行くな」
「ああ、おう!」
雄介は和也たちに手を振る。
「では、今日は泊めさせていただいてありがとうございますね」
「あ、ああ、また来てな」
本来なら家主である望が答えるべきところなのだが、雄介が全部答えている状態だ。
その後、気付いたかのように望は顔を上げて、
「またな……」
と作り笑顔で二人を見送る。
その後、庭に置いてあった和也の車のエンジン音が聞こえてくると、雄介はため息を吐く。
そして望の方に顔を向けて、
「今日のお前は態度があからさまだったぞ……」
「うるせぇー」
「何が気に入らなかったんや? 和也たちを追い出すかのように帰宅させたやろ? 和也の方はその望の態度に気付いておったようやけど……」
望も食べ終えた食器をキッチンへと運び始める。
「当たり前だ。逆に言えば和也の性格をよーく知ってるからな……。だから、和也は気付いてくれたんだろ?」
「はぁ!? 和也の性格分かってて逆に追い出した感じやったんか?」
「そうだよ、悪ぃかよ……」
「それって、どういうことなん?」
雄介は怒ったような声で望に聞き返す。
「ホント、お前マジで分かってねぇの?」
「分からへんけど……」
望はため息を吐くと、よほど今日の望はイライラしているのか、それとも今雄介に言おうとしていることが照れくさいのか、それは分からないが、頭を掻くと、
「お前と二人きりで居たいからに決まってるだろ」
その望の言葉に、雄介は言葉を詰まらせて目を丸くする。
確かに昨日から望の様子が変だということには気付いていたが、本当に今日の望は変すぎる。
悪いが、望という人間はこんなに素直じゃなかったはずだ。確かにいつの頃からか雄介にだけは気持ち素直になってきたと思っていたのだが、今日の望の態度は明らかにおかしい。でも雄介には素直になってきたと思われている望なのだが、和也たちには相変わらずの態度だ。むしろ今日の望は和也たちに対して冷たすぎるほどだったのかもしれない。