目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ー雪山ー48

 雄介は次の瞬間、望に向かって笑顔を見せていた。


 その笑顔に、一瞬で顔を赤くする望。


「消毒終わりーっと……ほな、次は包帯やな?」


 テキパキと治療していく雄介に、目をパチクリさせている望。


「お前さぁ、ある意味、新人さんより使えるのかも」

「なーに言うてんねん……こんくらい誰にでもできるやろ?」

「あ、ああ……まぁ、そうなんだけどさ」


 さっきまであんなに治療を嫌がっていた望だったが、今は嘘みたいに笑顔になっていた。


「ほい! 終了!」

「あ、ああ」


 望の睨んだ通り、雄介が巻いた包帯は緩くもなく、きつくもなく、ちょうどいい感じで巻かれていた。


 望がそこで安堵してソファの背もたれに背中を預けていると、今度は部屋内に掃除機の音が響いてくる。


 きっと雄介がガラスの破片の片付けを始めたのだろう。


 だが、その掃除機の音がなかなか鳴り止まない。ただガラスの破片を掃除するだけなのに、こんなにも時間がかかってしまうものだろうか? 望がふっとキッチンの方に視線を向けると、今はガラスが散らばった場所ではなく、どうやら雄介は他の所を掃除し始めているようだ。


「雄介……さっきの所だけでいいって……」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?