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ー雪山ー66

「あ、ああ……」


 そう言う望は、不満そうな声で布団の中へ潜ってしまう。


 そんな望に、布団の上から軽くポンポンとし、雄介はお粥の用意をすべく階下へ向かう。


 雄介はお粥を作り終えると、それをお盆の上に乗せ、包帯をポケットにしまい部屋へ戻る。


 だが、望はまだ布団の中に潜っていて、拗ねたままだ。


 その望の行動に、雄介はため息をつく。


 雄介はお盆をベッドサイドのテーブルに置き、望に声を掛ける。


「望……ご飯できたで……」


 雄介はそう優しく声を掛けたが、望は起きるそぶりを一切見せない。しかも返事もしない。


「望、腹減ってへんのか? 腹減ってなくても、少し食べるだけでも違うし、食べられるんやったら、起きてな」


 そう言っても、望はまだ起きる気配がない。


「それとも、もう寝てもうたんか? それやったら、起こす必要ないんやけど……。ほな、これ、下に持って行って俺が食べてくるわぁ。本当は望に食べて欲しかったんやけどな」


 そう雄介は独り言のように言い、下へ向かおうとした。すると、布団の中から望の手が伸び、雄介の服を掴む。


「……へ? 何?」

「俺から離れるなよ。今日は俺が寂しいの、分かってるんだろ? なら、行くんじゃねぇよ」

「せやけど、これ、食べてくれないとあかんしな? ってか、起きておるんやったら、一口でもええから食べてぇな」

「んー」

「何で、そこで悩む必要があんねんなぁー? 一口さえ食べてくれれば薬だって飲めるやろが……。そこは望がよーく知ってることやろ?」


 その雄介の言葉に、望は掴んでいた雄介の服を離す。


「……ってな……そこは、病院で望が患者さんに言ってることと違うん?」


 いつもわがままな望だが、今日はいつもに増してわがままな気がするのは気のせいだろうか。

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