「そうなのか。だから、琉斗はすぐに雄介の言葉を信じたんだな」
「そういうことや。子供は純粋で素直ってことを覚えといた方がええで。和也みたいな子供やったら大変やけどなぁ。琉斗くらいやったら、小さな嘘くらいなら見破れんしな」
「ああ。和也みたいな子供だったら、確かに扱うのは大変だな」
そう言って、二人は朝から和也のことを思い出し、くすくすと笑い合った。
「さて、飯の用意せんとなぁ」
雄介はベッドの上で大きく伸びをすると、いつもの制服に着替え、琉斗と一緒に階下へ降りていった。
「今日は琉斗、一人で寝れたんやなぁ」
「うん! 平気だったよ! 怖くなかったしね」
「そうやったんかぁ。これからも一人で寝るか?」
「うん!」
琉斗は雄介に向かって笑顔で頷いた。
「ほんなら、しばらく一人で寝てもええで……」
「うん! でも、お母さんが帰って来たら、お母さんと一緒に寝てもいい?」
その言葉に、雄介は一瞬考え込んだ。美里が帰ってくれば、琉斗は自分の家に戻るはずだ。それを雄介に聞く必要はないようにも思える。それに、以前琉斗が言った『雄介おじちゃんたちとお母さんと一緒に住む』という話とも関係があるのだろうか。
「んー、琉斗、どういうことや?」
「んー……お母さんが帰って来るまではボク一人で寝るんだけど、お母さんが帰って来たらお母さんと一緒に寝てもいい? ってこと……」
「あー、そういうことなぁ。お母さんが帰って来たら、一緒に寝てもええよ。今まで我慢しとったんやから、お母さんに甘えたらええねんで」
そう言いながら、雄介は琉斗の頭を優しく撫でた。
すると琉斗は満面の笑顔を見せ、雄介に向かって元気よく頷いた。それから機嫌が良くなったのか、朝ご飯ができるまでの間、なぜかリビングで踊り出した。
そんな琉斗の様子を見て、雄介は不思議そうに声をかける。
「琉斗……何踊ってるん?」
「ん? 今度、幼稚園である運動会のお遊戯で踊るのー! それを踊ってるんだよー」
「あ、そっか……。そん時はお母さんも来るんやもんなぁ。気合いも入るやろうしなぁ」
「うん! ボク、頑張るからね!」