きっと望は雄介と付き合っていく上で、人と付き合うという事を学んだのであろう。
雄介は望の言葉に少し黙っていたのだが、
「やっぱ、俺達は付き合わない方が良かったんかなぁ? 望と初めて会った時はそないなことを考えずに望に告ってまったけど、よく、考えたら……望にはそないなことがあったんやな。ホンマ、遊んどる場合やなかったって訳や」
「だ、だけど、俺は本当に今は雄介とは別れたくはねぇと思ってんだよ。最初は確かに男と付き合うってことに戸惑ったり考えたりしてたけどさ。 今は俺にとってはお前が必要って思ってるし、本当に好きだと思ってるんだぜ。それなのに、俺が病院の後継ぎを作る為にお前と別れるってことも考えたくもねぇんだよ」
何だか、今の二人にいきなり現実問題が降りかかってきたようにも思える。せっかく今日はいい雰囲気だった筈なのに、雄介が愛情の為に言ったある一言で、その空気が一変したような気がするのは気のせいであろうか。
「俺やって、望とは離れとうないで……せやけど、望にはそないな事があったって訳やし」
「でもさ、良く考えてみろよ。親父は俺達の関係を知ってて、俺達の為に家は建ててくれたし、雄介には医学部への金を出してくれたくらいだぜ! ってことは親父は俺達のことを認めてくれているってことだよな?」
「あ、まぁ……そういうことになるやんな」
「つーことは、親父は俺にあの病院を継がせる気はなかったってことか」
「そういうことになるのかもしれへんけど。望はその……院長にならなくてええんか?」
「別に、今まで院長になりたいって思ったことはなかったからな。あんな気が重たい役職は俺には向いてねぇって思ってた所だしな」
「もしかしたら、望の親父さんは望のそういう性格を分かっていたのかもしれへんな?」
「でも、親父は俺にこれから作る病院を任せたじゃねぇか」
「それは、あくまで仮みたいなもんなんやろ?」
「そこは良く分からねぇんだけどさ。とりあえず、親父は俺に病院を継がなくていいってことを言ってんだよな? ま、親父は歩夢と一緒に居る期間が長いから歩夢にメインの方の病院を継がせるのかもな」