望と雄介は、さっき言っていた通りに裕二の知り合いで幼なじみだという病院まで辿り着く。
望たちが働いている病院は、二、三年前に建物自体はそのままで内装と外装を変え、綺麗な病院へと生まれ変わったのだが、裕二の幼なじみが院長を務めている病院は昔ながらの建物の病院といったところであろうか。白色の外装は何年もの風雨を受けて汚れており、以前の地震による影響で壁には少し破損している箇所もあった。
望も雄介も、この病院には一度も来たことがない。二人はとりあえず、病院内へ入れるであろう緊急用の入口を探す。
救急車以外でも、大きな病院であれば熱や怪我をした場合に一般の人でも利用できる入口があるものだ。望たちはその入口を探し始める。
だが、緊急用の入口がなかなか見つからず、どうやら病院の外側をぐるっと回ってしまっていたようだ。
そんな時、数台の車が目に入ってくる。
患者用の大きな駐車場は先ほど病院の敷地に入った際に見えたが、今数台車が止まっている場所はその入口とは反対側で、職員用入口も目の前にある。きっとここは職員が車を止めるための駐車場なのであろう。
と、その時、望の横を歩いていた雄介が声を上げる。
「あ! あの車や! 歩夢を乗せた車は!」
「……へ? それ、本当に間違いないのか?」
「黒色のワゴンやろ? それと、ナンバーも見事に一致しとるしな」
「……ってことはさぁ、本当に歩夢はここに居るってことか?」
「ま、確実とは言えへんけど、可能性がかなり高くなったっちゅう訳やな」
望と雄介は、目の前に建っている病院を見上げる。
流石に日付が変わろうとしている時刻では、病院内は真っ暗な上に静まり返っていて、非常階段用の緑色の灯りが点いているだけだ。
時折、小さな灯りが見えるのは、夜勤の看護師が見回りをしているからであろう。
「でもさぁ、例えば緊急用入口から俺等が入れたとしても、そっから、どう病院内に入るか?だよなぁ。緊急用入口付近には、もしもの時を考えて、だいたい警備員が居るしよ。まずは夜間診療の患者として中に入らなきゃならねぇし、そっから、どう病院の更に奥に入るか?だよな……」