「初めて来たら、この音はうるさいかもしれへんよな。前にデパート行った時のゲーセンはファミリー向けやし、デパートの上のやから、小さいゲーセンやったからなぁ。本格的なゲーセンってのはこんな感じなんやで……」
そう雄介は望に説明すると、望が外で手を繋ぐのを嫌がることを分かっているからなのか、望に向かい手招きをし、後を付いて来るよう促す。
そんな雄介に首を傾げながらも、望はその後に付いて行く。
雄介はいったいどこに連れて行ってくれるのだろうか。
望が雄介の後に付いて行くと、女の子たちが騒いでいるような場所へと連れて行かれた。
その様子に望は引いていると、雄介は望の腕を引っ張る。
「お、おい……こんなとこに行くのかよー」
「やっぱ、カップルって言うたらここやろー! プリクラって言うんやでー。要は写真やな!」
雄介は女の子たちの合間をぬう際に、さりげなく望の手首を引っ張り、プリクラの機械の中へと入って行く。
「この中やったら、二人きりになれるやろ?」
「た、確かに二人きりだけどさぁ、そ、外には人が居るだろうがぁ」
「ま、そうやねんけど……俺も和也達みたいに望との写真が欲しいんやって! それに、今日は望、俺に付いて来るって言うてくれたやんか」
「まぁ、確かにそうなんだけどさぁ……でも、まさか、こんなとこに連れて来られるなんて思ってなかったしよ」
「ん? 嫌やったん?」
そう雄介は複雑そうな顔をしながら望に問う。
「別に嫌やったら、ここから抜けてもええんやで」
笑顔で言う雄介だが、その瞳の奥では笑顔ではなく、困ったような表情をしているようにも見える。
そんな雄介に何かを感じたのか、それとも望が雄介に前に言った言葉を思い出したのか、望は笑顔を雄介に向けると、
「分かった……確かにそうだったんだよな。俺が前に言ったんだもんな! 『雄介に引っ張ってくれ』ってさぁ。それに、今日は俺が雄介に付いて行くって言ったんだから、今日は雄介が行きたいとこに付いて行くしよ」
「あ、うん……ほな、ありがとうな。ほんなら、今日はめっちゃ楽しませてあげるって! ほな、まずはプリクラな!」