「せやねぇ……ほんなら、望は折りたたみ系でも、色々選んでおいてな。ほんで、その中から、機能とかに関しては俺が選ぶしな」
「ああ、分かった!」
望はそう言うと、今度は色を重視して探し始める。
折りたたみ系と決まれば、あとは色が重要になる。折りたたみ系の携帯といえば、どれも似たり寄ったりのデザインが多い。それなら色を選ぶ方がいいのかもしれない。
携帯の色も昔に比べれば種類が増えたとはいえ、主力は今でも黒色と白色が多い。他には灰色や赤色、ピンク色などが機種によってあるくらいで、特別に多様なわけではない。ごくたまに緑色や紫色がある程度だ。
「んー、そうだなぁ、前の携帯は白色だったから、今度は黒色にしようかなぁ?」
「黒色にするんか? なんか望っぽくないって言えば望っぽくないんやけど……」
「だけど、白色や黒色の他に何か俺っぽい色があるか?」
「せやねぇ……? シルバーとか灰色やと、オッサンっぽいしなぁ。思い切って赤色とか緑色とかはどや?」
「流石に、それは似合わないと思うんだけどなぁ」
「ほんなら、白色か黒色しかないんかぁ」
「仕方がねぇか……なら、黒色にするかな?」
「ほな、俺は赤色かな?」
「お前って、赤色好きだよなー。前の携帯もそうだっただろ?」
「せやけど、前とはデザインとか違うしー。何か赤色ってかっこええやんかぁ」
「え? あ、まぁ……そうだけどよ。でも、お前が赤色の携帯を持っていてもあまり違和感がないからいいよなぁ」
「そうか? ま、意識したことがないところかな? 望がそれでええって言うんやったら、赤色でええし」
「じゃ、俺は黒色でお前は赤色な」
「それで、ええよ。機能も問題ないようやしな」
二人はそう決めると、カウンターへ向かい、機種変更の手続きを済ませた。
そして、三十分ほど空いた時間に二人は繁華街へと繰り出した。
流石は日曜日というだけあって、人の多さに驚かされる。人混みで肩が触れ合うほどの混雑の中、望は雄介のすぐ後ろを追いかけるように歩いていた。しかし、あまりにも人が多いため、雄介と離れてしまいそうで心配になる。
そんな中、雄介と望に女の子たちの視線が集まっているのは気のせいだろうか。
確かに雄介は、女性の視線を集める雰囲気を持っている。かっこよさや爽やかさが際立ち、まるで芸能人のようだ。昔から「カッコいい身長がある男性」として注目されることが多く、女性たちが目を引かれるのも無理はない。
雄介はそんな視線に気づいているのかいないのか分からないが、何事もなかったかのように繁華街を進んでいく。きっと、さっき望と約束していた洋服屋に向かっているのだろう。望も視線に気づきながらも、雄介を見失わないよう必死についていく。
さらに、視線だけでなく女性たちの会話が望の耳に飛び込んできた。それを聞いているうちに、望の表情は少し曇り始めていた。