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ー決心ー99

 雄介と和也の言葉に、歩夢と望は自然と視線が合い、目をパチクリとさせていた。


 それを見ていた雄介はクスリと笑い、


「やっぱ、兄弟なんやなぁ。同じ行動しとるし」


 その雄介の言葉に反応したのか、それとも歩夢と視線が合い気恥ずかしくなったのか、望は顔を俯かせ咳払いをすると、


「ん、まぁ……そういう事なら、せっかくの兄弟なんだし、これからも長い付き合いになることだし、仲良くというか……なんだろうな」


 何か言いにくそうにしている望に対し、歩夢はじれったくなったのか、望が最後まで言わないうちに言葉を発する。


「やっぱ、兄さんだよねぇ。兄さんの性格って、なんかじれったくって仕方がないんだけど。何でこう簡単に『仲良くしてこー』って言えないのかなぁ?」

「せやせや、歩夢の言う通りやわぁ。望はなんでこうハッキリ言えんのやろなぁ?」


 二人に言われた望は、流石に今度は怒りで顔を真っ赤にし、雄介と歩夢に向かい、一発、


「うるさいっ!」


 と一喝するのだ。


「あーあ、雄介と歩夢、望のこと怒らせちゃったー。ま、歩夢はいいけど、雄介……お前、後で大変なんじゃねぇの?」


 そう茶化すように言う和也に、雄介の顔色が青ざめたということは言うまでもないであろう。


「望……スマンなぁ」


 と言いながら雄介は望に抱きつこうとして立ち上がった直後、


「水がもう膝まで来とる」

「そっか……もう、そこまで来てたのか。とりあえずさ、怪我してない人達だけでも、雄介が割ってくれた窓から脱出させたらどうだ?男性なら、そっから出れるだろ?」

「ま、一番ベストなのは俺が上がることが出来て引き上げればええねんけどな」

「それは絶対に決まってんだろ!」


 さっきの名残なのか、それとも雄介がそういう行動をするということに怒っているのか定かではないが、望は腰に手を当て眉を釣り上げながら言うのだ。


「まぁ、流石にアカンよな」


 雄介は誤魔化すように乾いた笑いをし、


「……って、お前は、腕を折ってるってことに自覚がねぇのかよ。それ以上悪化させたら、腕が使えなくなっちまう可能性だってあるんだからな」

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