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ー平和ー23

 望は一息吐くと、


「悪いけど……俺はもう女性には興味ねぇよ。もう、大学の頃に付き合った女性で懲り懲りだからな。医者ってだけで、金を持ってるって思われてて、『愛』って言葉も知らない。だけど、俺はそれを雄介に教えてもらったんだよ。でも、今までの雄介は少し忘れてたみたいだけどな」

「ホンマ、スマン! そこはホンマに謝るわぁ」


 雄介は両手を合わせ、望に向かい頭を下げる。


「今まで勉強がいっぱいいっぱいで、他のことに手が回らなかったってことか……でも、いつも予習だけしてたんだろ?」

「たまにレポートも書いてたわぁ。それに、俺が勉強に集中するようになったのは、その……望には悪いねんけど、望がその……毎日のように忙しくしてたからなんやで……」


 雄介は少し申し訳なさそうに言う。


「俺がそんなに忙しそうにしてたか?」

「してたんやって。最初の頃は声掛けられんくらいやったからな」


 雄介にそう言われ、望は瞳を宙に浮かせ、どうやら三年前のことを思い出しているようだ。


「あ、確かに……雄介の言う通りだったかもしれねぇな。あの頃は家に仕事を持ち帰っていたってのもあるし、いや、その……雄介が家に居るのが分かってたからよ。仕事を持って帰ってきてたっていうのか」

「なんや、そうやったんかいな。それで、声掛けても忙しそうにしとったって訳やな」

「ま、そういうことだ」

「ほんで、俺がいくら声を掛けても生返事で、ほんで、俺も望の仕事の邪魔をせんようにって思うて勉強に打ち込んでまったって訳や」

「そっか……そんなすれ違いがあったんだな」

「それで、今まで話す機会すらも失ってもうて、和也が手伝ってくれたってことなんやな」

「まぁ、和也は俺の顔色とか伺ってその話を引き出されちまったんだけどな」

「顔色だけでか!?」

「アイツの場合、それだけで分かっちまうっていうか、普段の俺をよく知ってるから、すぐにそういうことに関して聞き出してくるんだよなぁ」

「和也はホンマ今の仕事が天職なんやなぁ」

「アイツに聞いたことがあるんだけど、アイツの母親が看護師で父親が医者だったって言ってたしな」

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