「それじゃあ、お願いしますね」
裕実は笑顔で和也のことを見上げる。
「分かったけど……何でだ……」
と和也が最後まで言わないうちに、裕実は気付いたのか、和也の言葉を一喝するかのように、
「内緒です!」
そう言って、和也の言葉を封じてしまう。
「分かったよ。 ま、とりあえず、俺が雄介のことを連れ出すってことは……お前は望と一緒に居るってことだな?」
「まぁ、そういうことになりますね。 とりあえず、それだけは答えておきますよ」
裕実はそこだけはハッキリと言い、今までに見せたくないような笑顔を和也へと向ける。
「ま、たまには雄介と二人きりってのもいいかぁ。 そんなこと今までなかったしさ」
「そういうことにしといてください」
そう言いながら、再び裕実は和也に向かい笑顔を向ける。
そして、四人が休みの日。 和也は裕実を望の家へと送ると、今度は雄介を連れて外へと出る。
和也は雄介を助手席へと座らせ、車を走らせる。
「とりあえず、俺たちは裕実たちに追い出された訳だが、何か事情知ってるか?」
「知る訳ないやろー。 望たちは何をコソコソしてるんやろな?」
「さぁなぁ。 珍しく今回は裕実が何も語ってくれなかったしな。 しかも、貴重な休みの日を利用してだぜ! って言っても今日は平日だけど」
「ま、今日はたまたま俺も休みになったんやけどなぁ。 ホンマ、アイツら何を考えておるんやろか?」
「んー、そこは、流石に俺にも全くもって検討がつかない所なんだよなぁ。 しかも、今は五月だぜ。 とりあえず、イベント事なら分かるんだけどさ」
「イベント事!? ってなんやねんなぁ?」
「例えば、バレンタインとか……かな?」
「バレンタインなぁ……そういや、今年もっちゅうか、俺は毎年、望からは貰ってへんで……」
「そうだったのか? まぁ、アイツがお前にしろ誰かにチョコを上げる性格ではなさそうだしなぁ。 ま、俺の場合は毎年貰ってるけどな。 ま、後はクリスマスとかもまだまだ先だしー」
「ほなら、イベント事じゃないと違う? 誕生日でないしなぁ。 ま、望の誕生日がもう少しやけど……自分の誕生日に自分で何かするって訳じゃあないだろうしなぁ」
「誕生日なら、俺が来月誕生日だけど……でも、それもまだまだ先だしーー。 もし、それだとしたら、雄介を抜くってのはおかしくねぇか?」