目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

ー平和ー58

「分かったよ。 ま、とりあえず、俺達も材料を買いに外に出るか?」


 望は裕実に強く言われても反論とかはせずに、すんなりと言葉を受け入れている。


 もし、これが和也からであれば反論をし即断っていたであろう。


 望はジャケットだけを羽織ると、裕実と一緒に買い物へと出る。


 その途中、


「あ、悪ぃ……銀行に寄って来ねぇと金なかったんだわぁ」

「そうだったんですか? じゃあ、とりあえず、銀行に寄ってからいきましょうか?」

「ああ、そうだな」


 望は近くにあった銀行の駐車場へと車を止めるのだ。


「な、裕実……お前はどうする?」

「一緒に行きますよ。 僕も一応下ろしておいた方がいいと思いますしね」


 二人は銀行の駐車場に車を止め、銀行の中へと入って行く。


 今日は平日で、丁度、サラリーマン達の休憩時間と重なってしまっていた為なのか、普通の平日と比べ混んでいて、少し時間が掛かりそうだ。


 裕実と望はATMの前で並び始める。


 少しずつではあるのだが、ATM利用者が減ってきているようにも思える。 しかもATMも混んでいれば、当然、窓口の方も混んでいる。


 置いてあるソファの方も待っている人がギリギリなのか、人が座れる程混んでいるのだから。


 望達が銀行に入って来て五分位した頃だっただろうか、やっと自分達の番だと思ったその時、銀行内が騒然となるようなことが起こるのだ。


 銀行内に居た数名の女性の口から悲鳴が上がり、それと、ほぼ同時に顔を上げる裕実と望。


 一瞬、何が起こったかさえ分からない二人だったのだが、顔を上げると一瞬にして理解したようだ。


 未だにそいつは声を荒らげ、持っていた拳銃を天井へ向かい一発発砲し、店内に居る全員を脅し始めたのだから余計になにかもしれない。


 そして店員に向かい持っていた拳銃を向け、


「今すぐに一億をこのバックに入れろ!」


 そう犯人は店員に命令までしている。


「バックに金を詰めている間、誰一人動くんじゃねぇぞ! もし、動いた奴が居れば、直ぐに殺すからな!」


 銀行に入って来たのは紛れもなく銀行強盗であった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?