先程も銀行内で悲鳴が上がったのだが、今も爆弾が爆発しマスコミや野次馬で人がごった返している中での爆発なのだから銀行強盗よりも騒ぎが大きくなるであろう。
そんな混乱に応じて犯人達は現場から望達を連れて逃げて行く。
望は犯人達と一緒に走りながら、人混みの中に大事な人物を見かけるのだ。
その横顔は、この人混みの中から望を探しているようだった。
確かに望にとって雄介も大事なのだが、今の爆発で何十人と怪我人が出ているようで、望はそんな状況に足を止めてしまう。
望の性格上なのか医者という性なのか、近くに怪我人が居ると放っておく事が出来ないらしい。 だから足を止めてしまったようだ。
望は真剣な顔をすると、犯人達にお金が入ったバッグを持ったまま、現場へと戻ろうとした直後、この現場一体に銃声が鳴り響く。
今まで騒がしかった、この辺りも、その銃声の音と共に静かになるのだが、その直後に再び悲鳴が上がるのだ。
「誰かー!」
と女性の悲鳴のような叫び声ような近くで何が起きたのであろうか。 そうだ。 今の銃声音で誰かが倒れてしまったということだろう。
その近くに居た雄介と和也は視線を合わせると、悲鳴を上げた女性の近くへと向かうのだ。
「どうしたんですか。何があった……ん?」
雄介はその女性の両肩を掴み今にも倒れそうな女性に優しく声を掛ける。
「そ、その人……」
その女性は手で顔を覆い、あまりの惨劇にもう見たくないのか指だけを地面へと指すのだ。
その女性が指を差した先を雄介と和也が見ると、地面には血溜まりが出来、そこには男性らしき人物が倒れていた。
雄介は一瞬、その光景に目を背けたが、とりあえず生死を確認するためにまずは背中を触ってみる。
どうやら、その人物はまだ生きているようだ。 触った背中から温もりが感じられたのだから。
雄介は安堵の溜め息を漏らすと、次の行動を起こす。
いったい、どこから出血しているのであろうか。それを確認する為に雄介は地面へとうつ伏せになっている人物をゆっくりと仰向けにさせると、その倒れている人物に雄介は目を見開き激しく瞬きを繰り返すのだ。そして自分の目は正常なのかを確認しているようにも思える。いや、これが現実なのであろうかと確認しているのかもしれない。