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桜の木が揺れ、ふわりと春の香りが鼻をよぎる。穏やかな日差しに、小鳥たちのさえずりが聞こえる。
そんなのどかで、平和なこの日に.....
俺は目隠しをされて、どこかへと引きずられていた。なんでこんなことに.....?
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話は数分前に遡る。
俺は、とある田舎町にある高等学校に通う男子高校生、
新品の制服に身を包み、桜舞う通学路を歩く。思い描いていた高校生活が出来ていることに、心躍らせていた。
これで隣に可愛い子でもいてくれれば、言うことなしの最高なんだがな。一人っ子で幼馴染もいないし、贅沢言っても仕方ない。高校生活の中で彼女を作れれば、あるいは.....か。
そんなことを考えながら、学校の門をくぐる。校舎までの一本道には、様々な人がいた。
「サッカー部です!よろしくお願いします!」
「吹奏楽部でーす!初めての人でも大歓迎でーす!」
どうやら部活動の勧誘らしい。看板やらのぼりやらを引っ提げて、新入生に声がけをしている。
この学校は、部活動が盛んな学校だ。俺がここを選んだのも、それが理由だったりする。運動部も文芸部も数多く存在し、活発に動いているところが多い。
中学の頃はサッカー部で、そこそこ活躍できていたという自負がある。それと学校とは別に、親の勧めでバドミントンのクラブにも所属していて、そっちでも大会上位の成績は残せていた。
入るならその辺かな~、なんて思っていた時だった。クイクイっと誰かに、袖を引っ張られた。
「うん?」
そして振り向いた瞬間、目の前が真っ暗になる。正確には、目の部分に何かを貼っつけられて、何も見えなくなった。そして、あれよあれよと手と足を縛られた。
「うおっ!?いやなになになに!?」
「みき、上手くいったよ!」
「.....グッジョブ。じゃあ連れていこう。」
「え!?ちょ、やめてくださ、い.....っくそ、ダメだ外れねぇ!」
俺は知らない2人組に捕まり、身動きも取れずに引きずられて連れていかれるのだった。
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で、今に至ると。いやもう何これ、カオス。
数分後、俺は床に降ろされた。どこかの教室だろうか、ガラガラと扉を開ける音が聞こえる。俺はまた引きずられ、椅子に座らせられる。
縄を解かれた瞬間に逃げ出そうと考えていたが、上手くいかなかった。解いた瞬間に逆に捕まれ、すごい力で今度は椅子に縛られたからだ。一体俺が何をしたってんだ!?
「よっ.....と。」
目隠しが外され、ようやく周りの景色が見えるようになる。やはりどこかの教室のようだが、まるで友達の家かのような内装になっていた。
そして目の前には、俺をここまで引き
1人は女性で、腰に手を当てている。眼鏡をかけたショートヘアで、読書が似合いそうな風貌だ。制服のリボンの色からして、一個上の先輩のようだ。
もう1人は.....男性、のはず。こんな濁すような言い方になったのは、その風貌が可愛らしかったためだ。童顔で顔が小さく、「男の娘」という言葉が合いそうな.....そんな感じ。この人も先輩なんだろうが、あんまそんな感じがしない。
俺の名誉のために言っておくと、俺にそっちの気はない。あくまで一般用語として使ったまでだ。ほんとうだからな。
「よく来たね、新入生くん。我が部にようこそ。」
「いやそっちが連行したんだろうが」
「.....先輩なんだけど、敬語を使う気はあるかな?」
「使って欲しいなら、まずはこんな犯罪まがいなことをやめて欲しいっすね。」
「あはは.....ごめんね、どうしても他の部に君を取られたくなくて。これが一番かなって思ったんだよ。」
話を聞く限り、どうやらこれも部活の勧誘のようだ。心象は最悪だが。
「はぁ.....で、ここはなんて部活なんです?どう考えても運動部じゃなさそうだし、文芸部なんでしょうけど.....」
「ふっふっふ、よく聞いてくれたね。」
女性の先輩はそういって、仁王立ちになる。その後ろで、男性の先輩が看板をバッと掲げた。
「私たちは.....文化部。よろしく、3人目の部員くん。」
バーンという効果音とともに、部活名が勝たられるのだった。.....てか、俺もう部員として数えられてるんだが!?
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