真っ赤になった顔を隠すように、彼は俺の胸に頬擦りするみたいに顔をくっ付けてきた。俺はこのうるさい心臓の音が彼にそのまま聞かれている気がして、恥ずかしくて決まりが悪かったが、珍しくくっ付いてきた彼を離せるわけがなかった。
「イル、僕は仕事がしたくなくなっちゃった……」
「どうして?」
「イルとこうやってずっと抱き合ってたい」
そんな素直に可愛いこと言われたら、俺は、俺は……。彼の細い首に手をかけて、あぁ、呼吸が乱れてく。
「レイラ、愛おしいが爆発しそうな時に普通の人間は何をするの?」
俺は震える手を抑えて、苦し紛れに彼に聞いた。
「ぎゅーって、抱き締めるんだよ」
彼は俺に教えるようにぎゅーって抱き締めてくれた。俺は彼に倣って、ぎゅーって彼の背中に腕を回して抱き締めてみたが、俺の中では全然満たされなくて、感情の渦に巻き込まれそうだった。
「俺、こんなんじゃ我慢できない」
彼を抱き締めてその耳を甘噛みしながら、俺は必死に性欲を抑え込もうとしていた。
「イル、こっち向いて」
俺は限界な顔で彼に向き合った。すると、彼の方から俺に唇を重ねてきてくれた。その嬉しさで俺は軽く脳がホワイトアウトした。軽く重ねるだけのキスだった。彼が唇を離そうとした瞬間、俺は彼の頭を掴んでその唇を離さなかった。そして、彼の唇の隙間から舌を忍び込ませて彼の口内をまさぐる。その気持ち良さで俺はどんどんと飢えていった。最大の幸福への飢えが加速していく。
「んっ……レイラ、シよ?」
「あぁ、イル……」
彼は良いともダメとも言わなかった。ただ俺の名前を真っ赤な顔をして呼んだだけ。それがとっても愛おしくて可愛らしくて、俺はキスをしながら彼の服の裾を捲った。
「レイラの身体、綺麗だね」
上裸になった彼の身体を見ると、ほどよい筋肉がついていて、絵に描いたような引き締まった綺麗な身体をしていた。
「……んっ、」
彼の身体の凹凸を指でなぞると、彼は声を我慢してる声を出して、呼吸を乱れさせていて、とっても愛欲を唆られる。
「腰、ほっっっそ!!折れちゃいそ〜♡」
彼の腰を両手でしっかりと掴んで、腰を振って俺のを擦り付けると、
「いやっ!あっ、嫌じゃないけど……ダメ……!!」
と顔を真っ赤にしながらそっぽを向いて言われた。あの冷静沈着な彼がこんなにも俺の腕の中で乱されている。すっごい可愛い!!!
「ふふっ、何がダメなの??」
「今はまだ、怖い……」
彼の目は両方とも潤んでいて、とても何かに怯えている様子だった。一気に俺の熱が冷めた気がした。
「大丈夫だよ、レイラ」
とキスを落として、彼を安心させようとしたが、彼の目からは涙が零れるだけだった。
「……ごめん、イル」
彼はそれだけ言うと、俺の腕の中から抜け出して、何処かへと行ってしまった。