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僕の隣に住んだ住人は憧れのアイドルだった!
僕の隣に住んだ住人は憧れのアイドルだった!
掛川ゆうき
BL現代BL
2025年05月28日
公開日
8.3万字
完結済
ただただ俺はアイドルを追っているだけの毎日だった……ある夜、マンションへと帰宅してきたら、引っ越して来た人物がいて、『こんな時間に……』と思って注意しようとしたら――そこに居たのは自分が憧れののアイドルだった! そこからの俺の人生は急展開――え?え?ハプニングがあってアイドルが家の中にー!? そこからは……二人だけの大人な世界になります。

第1話

※こちらは性描写ありの物語です。


 俺はごく普通のサラリーマンだ。


 本当に、今までも驚くほど普通な生活を送ってきた。


 普通のサラリーマン家庭に生まれ、頭も体力も普通。顔だって、多分“普通”な部類だと思う。


 ただひとつ違うのは、好きになった相手が「男性」だということだ。だって、普通は女性を好きになるもんだろ? だから俺は、それ以外は普通だけど、そこだけは“普通”とは違う。


 普通なら女性に惹かれるはずなのに、俺の場合はどうしても男性に目がいってしまう。完全に、男のことが好きなんだ。


 初恋だって、相手は男の子だった。それだけは間違いない。


 小さい頃、よく一緒に遊んでいた近所の男の子。小学校も同じで、特別に意識していたわけじゃなかったけど、中学に入って気づいた時には、いつもそいつのことを目で追っていた。


 その男の子が校庭で体育の授業を受けているときは、教室の窓から見ていた。同じクラスになったときには、後ろの席からじっと見つめていたこともある。そういう青春時代の思い出がある。


 普通なら、そういうふうになるのは女の子が多いと思う。でも、男だって、好きになった相手が男性なら、自然と乙女になるものなんだ。


 よく「初恋は実らない」と言うけれど、やっぱり実らなかった。いや、正確に言うなら、あの頃の俺は世の中を少しだけ分かってしまっていて、もし告白なんかしたら「気持ち悪い」と思われて、友達関係すら壊れてしまうんじゃないかと怖かったんだ。だから、告白を諦めてしまった。


 中学生になると、ごく一部の男女は恋人同士になって、手をつないだり、デートしたり、「もっと一緒にいたい」と親に怒られるほど夜遅くまで過ごしたりする。でも、それが恋人なんだから当たり前だろう。


 でも、俺が好きになったのは同性。やっぱり、その年頃になると社会の仕組みや「普通」が見えてきて、同性に告白する勇気なんて出てこなかった。振られるのが怖かったのもあるけど、それ以上に、友達としての関係を壊したくなかった。


 告白して関係が終わるくらいなら、告白せずに友達のままでいたい。そう思ってたんだと思う。


 そうして、俺は将来の夢も特になく、学生生活を送っていたせいか、今もごく普通の生活を送っている。


 朝起きて、満員電車に揺られ、時には足を踏まれながら都心の会社へ向かう。まぁ、俺もそこそこ都心に住んでいるけど、それでも電車を使わないと会社には行けない。


 会社では普通に仕事をこなして、たまに同僚と飲みに行く程度。


 本当に、毎日が平凡すぎて退屈なくらいだ。


 だからといって、波乱万丈の人生や貧乏生活、お金持ちの豪華な暮らしを望んでるわけじゃない。ただ、平凡で平和な毎日が、あまりにも退屈すぎるんだ。


 唯一の楽しみといえば、休みの日に一人で部屋にこもって、男性アイドルのDVDを見ること。


 そう、俺は男が好きなんだから、憧れるのも男性。きっと世の女性たちと、心の中は同じ乙女なのかもしれない。


 これが、俺の平凡な生活の中での唯一の楽しみなのかもしれない。


 確かに、アイドルなんて一般人からしたら手の届かない存在だ。でも、だからこそ逆に、自由に憧れて、妄想して好きになってもいいと思う。


 そして俺は男だから、そのアイドルを見て妄想して、一人でシてしまうことだってある。


 ……さすがに、それだけは誰にも言えない秘密だ。いや、バレても平気なのかもしれないけど、一般的に考えて、そんなこと聞いたら引かれるだろう。流石の俺も、そこまで嫌われるのはごめんだ。


 だから、これは絶対に、自分だけの秘密。


 ――そんな平凡すぎる毎日を送っていた俺の生活に、まさか心臓がドキドキするような出来事が起こるなんて、思ってもみなかった。

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