202×年 8月7日――。
「おう、中沢じゃないか!」
「ああ、清さん、久しぶりだねぇ。最近見なかったけど、どうしたんだい?」
「ああ、一週間ほど娘の家にお邪魔してたんだよ。やっぱり都会は良いなぁ……」
「ははは、便利だからなぁ」
二人の笑い声が畦道に響く。
「おお、そうだ。後でうちのもんが吉江さんの所に行くって言ってたぞ。吉江さんは元気かい?」
「ああ、元気元気。一週間後に娘が孫を連れてやってくるって言って……張り切っちゃってさぁ」
「ははは、数年ぶりにこっちに来るんだろう? そりゃ、張り切るってもんさ……そういや、中沢。今からどこに行くんだ? こっち方面だと……もしかして、祠の見回りかい?」
中沢は肩を竦める。
「当たり……一応管理人だからねぇ。月に一回くらいは、顔を出してやんないと」
「さすが、真面目な政夫さんだな!」
「その呼び方はむず痒いからやめてくれ」
バツの悪い顔をする中沢を、面白そうに見る清。
「あの階段はな……膝にくるんだよな、最近。そろそろ勘弁してほしいんだが……ん……?」
中沢は清の後ろを見た。
「どうした?」
「ああ、後ろが気になってさ」
そこには、門が――。
「どれどれ……読みづらいけど……ああ、“御堂”って書いてある」
「御堂か。あの祠と同じ名前だな」
二人は顔を見合わせる。
「「……ん(え)? こんなところに家なんて、あったか?」」
……完……?