目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第20話 僕の怒り

 今の時刻は午前九時ころ。僕は読書をしている。読んでいるのはミステリー小説。最近人気の作家の作品。ネットでその小説家のことを調べてみると二十五歳と書かれていた。僕と同じ年齢じゃないか! 凄い! どうやら早稲田大学卒のようだ。僕と同じ年でも、頭のできが違うようだ。悔しい! まあ、僕は別に小説家になりたいわけじゃないからいいけれど。読む専門。 最近、詩織と会ってばかりで読書ができなかった。まあ、それはそれでいいんだけれど。次に読む本も用意してある。SF小説。この作品を書いている小説家がいて、短編小説を書くことで有名だ。僕は長編小説を読むのは苦手。長いから、毎日読んでいても忘れてしまう。だから、短編小説ばかり読んでいる。 詩織は読書に興味はないのだろうか。今夜会ったら訊いてみよう。興味あるといいな。オススメの小説があるから。 二十ページくらい読んだだろうか。朝に三時間くらいしか寝てないから眠くなってきた。読書を中断して、寝ることにした。 目覚めたのはお昼を少し過ぎたころ。母に階下から呼ばれた。

「新太郎ー!」と。

 僕はその大きな声で目覚めた。なんだよ全く、と文句を言いながらベッドから出て、部屋のドアを開けて階段の前に行ってみた。「なに?」

 いかにも機嫌悪く返事をした。母は、

「お昼ご飯できたよ」

 なんだ、そんなことかよ。そう思いながら僕は言った。

「今はまだいらない、寝ていたいから」

 母はと言うと、

「あら、そうなの。うどんだから伸びちゃうよ」

 僕は苛々しながら言った。

「僕、夜勤で寝ていないんだ! 寝かせてくれよ!」

 すると母は、

「はいはい、すみませんね」

 全く悪びれる様子もなくそう言った。

「じゃあ、食べないの?」

 そう訊くので僕は、

「食べないとうどんのびるから食べるよ!」

 母は言った。

「そんなに怒らなくてもいいじゃない! せっかく作ってあげたんだから!」

 今度は母が逆ギレした。僕も苛々しているがそのまま居間におりた。

「今、どんぶりにつぐから待ってて」

 仕方のないババアだ! と思った。用意すらできていない。僕がこんなに怒ったのはいつ以来だろう。母の顔を見ると驚いている様子。滅多に怒らないからだろう。その点、妹の心愛は結構怒りっぽい。よく聞くのは息子は母親に似て、娘は父親に似るという。まあ、一概には言えないだろう。ただ、そういう傾向がある、というだけで。 僕はうどんを食べている内に、怒りは少しずつ治まってきた。そして、食べ終わった頃にはすっかり平常心に戻っていた。母は、僕の様子をみて、

「お腹いっぱいになったかい」

 と訊いてきた。僕は、

「うん、美味しかった」

 そう答えた。母の顔を見ると、安心したようだ。母をビビらせてしまったようだ。悪いことをしたな。今度から気をつけよう。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?