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【Epilogue】

 数日後、友人の紹介で会った同じ歳で別学部の裕也ゆうやは、穏やかで誠実な人だった。


「佳純ちゃん、星好きって聞いたからさ、プラネタリウムのチケット取ったんだ。一緒に行かない?」

 その提案に、佳純は一瞬心が軽くなった。

「うん、楽しそう!」

 そうは答えたが、悠斗の笑顔に博己の面影を探してしまう自分が後ろめたい。


 その夜、部屋の窓からベガを見つめながら、佳純は呟いた。

「お兄ちゃんの織姫はかおりさん。あたしは……、自分の彦星を見つけなきゃ」

 心の底では博己への想いがまだ小さな光となって瞬いていたが、それが昔とは少し変質してきていることにも気づいている。


 佳純は歩き出さなければならない。博己への想いを胸の奥に沈め、新しい星を探すために。


 ──そうよ。今のあたしはもう、博己お兄ちゃんの織姫になりたいんじゃない。ただ、お兄ちゃんとかおりさんみたいに「心から愛し合える人」と巡り逢いたい。


 博己は永遠に「兄」であり、それ以上でも以下でもなかったとようやく思える。

 夏の大三角を構成する三つの星が、等間隔を保って近づきも遠ざかりもしないように。


 本心からそう言えるようになった佳純は、少しだけ成長できたのかもしれない。


  ~END~




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