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えんまのむすめ
えんまのむすめ
ゆめじはるか
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年06月05日
公開日
2,431字
連載中
現世(うつせ)には、小賢しい輩が増えてきた。事実を知れば誰もが眉をひそめるような残虐非道な所業をしでかしておきながら、法の裁きを逃れ、或いは本来なら極刑が妥当の悪を成しながら金やコネや権力などで無罪放免を勝ち取る人面獣心、獣にも劣る【人の姿をした悪鬼羅刹】ども。  人が罪人を正しく裁くことができぬのならば、【人ならざるもの】が正しく断罪するよりない。  そう、これはそういうお話である。 この物語には簡単な犯罪は出てきません。 最初の話だけは違いますが、他は 【完全犯罪】 のみです。 ○完全犯罪の定義 3箇条  1 誰にも疑われない。   (警察、検事、探偵含む)。  2 誰にも   殺害トリックやアリバイ工作を解かれない。  3 加害者が墓まで持って行ったら   逃げ切りとみなす。 この物語の中には【誘導尋問のいろは】が詰まっています。 最後に 本作の完全犯罪を模倣した場合は違う完全犯罪で模倣犯をワタクシがこの世から消します。ゆめゆめ模倣犯になりませぬよう、あくまで娯楽としてお楽しみくださいませ。 誘導尋問を勉強するのは結構ですが、 【普通に人間の幸せを掴むためには不要】だと思います。 絶えず誘導尋問しなければ相手の真意を窺い知れないような方とはあまり親密にならないことを強くお勧めいたします。私は【実父】のような者とは一刻も早く離れるべきでした。心の中が【対人地雷】だらけの人と一緒にいるのは常に【命の危険】がありましたゆえ。

速記官というお仕事(ということにしておこうかしら)。

 2022年12月5日月曜日。曇天。

 今日もまた日は登る。


 AM5時。浴室から出た私は、適当にバスローブを羽織って腰丈ストレートの髪をこれまた適当にまとめてヘアキャップに収める。そしてリモコンでテレビをオン。


「……続きまして次のニュースです。今から四年前に発生しました68歳男性

【箕平清三(ミヒラ セイゾウ)】

さんの

【密室不審死事件】

について、本日昼11時、最高裁において刑事事件として遺族から刑事告訴されている

【煤原龍志(ススハラ リュウジ)】

被告に対しての判決言い渡しが予定されております。

この事件に関しては

【物的証拠が何一つ見つからない状態】であるにもかかわらず、

【状況証拠】

【証人】

【被告側の動機】

【被告の当時のアリバイがないこと】

が明らかであることから検察庁及び担当検事は上告棄却は視野に入れておらず、徹底抗戦の姿勢を未だ崩しておりません。


この事件に関しての過去の傍聴には前例のないほどの関心が集まっており、本日の傍聴席の抽選確率は500倍を超える見通しとなっており……」


今やオールドメディアと呼ばれるテレビでさえこれほど関心を集める事件として報道されておりこれで

【被告が無実でした】

では済まないでしょうね。今回の被告側に逆に訴訟起こされかねないわよ全く。


 そもそも何でみんなこんなにバカばっかりなんだろうか? 物的証拠がなくて犯人が仮に被害者を殺害したのなら、むしろ凶器はイコールレベルで絞られるでしょうに、ね。ま、だから私が遠路はるばる『こんなところ』にまで派遣されて来たんだけれどもね。


     ピピピピッ!


今日の職場を想定しながら気だるそうに物思いに耽っていた私にアラームが怒る。

「あ、もうこんな時間だったの⁉︎」

 まずいマズイ、早く身支度しなきゃ。

 脱いだバスローブを畳んで洗濯カゴに入れると体表面の水滴をバスタオルに吸わせる。あらかたカラダの水滴を取り切ったので下着は白の上下をチョイス。個人的にTバックはキライ。アウターに響かないという長所はあるものの、どうもあの食い込む感じがイヤ。幸い今は冬の日本。

フルバックのショーツで問題ない。それにしても上の無駄な脂肪の塊はどうにかならんものか。夏には下乳が蒸れるし、年中肩こりに苛まれる。これは呪いか?

呪いなのか? 大きくても邪魔なだけだし『なんならこの世でコレ(私の乳房)が有効活用されることなど未来永劫ない』だろう。などと思いながら口に咥えていた髪ゴムを右手首に移してサッと髪を一つにまとめる。その上で一本にまとまった髪を左肩から前に流してブラをつけにかかる。

 女とまともに付き合ったことのない男性なら知るわけないことだが、基本ブラというのは

1・背中側に乳当てがくるようにホック側を前に持ってきてとめ 

2・のちに乳パットをグルリと前に持ってきて胸の二つの脂肪を収めるものだ。 前フックタイプなら違うが。

 ここまでしてようやく三面鏡の前に座る。


 鏡に写る女性が私をまっすぐ見つめる。私の目の前に映る女性は

 氏名 淵間 妙 (フチマ タエ)

 年齢 24歳    大卒2年目

 職業 速記官

 身長 176㎝

 体重 りんごの詰まった木箱

     三ついかないくらい

 服を買う時に必要なパスワード

 B 106 W 54 H 89


 髪は黒髪ロング(地毛は違う色だがお堅い職場なので毎月黒に染めないとならない。面倒極まりない。基本は姫カットにしてあるが、仕事の時は前髪が目にかからない程度に残して、ほぼ後ろにまとめる。ポニテくらいなら何も言われないのにツインテにすると叱られるのは何故だろうね。

 我ながらキツイなと思う切れ長の目。

キツイ印象になりがちだから、極力柔らかい表情になるよう努力してるつもりだけど。

 まつ毛は、付けま+マスカラ盛り盛りと思われるほど長く濃い。なんなら長すぎるから揃えて毎週切らないとならないほど。

 日本人は主に団子っ鼻の人が多いので余計に私の鼻梁は目立つ。己の鼻を潰す訳にはいかないのでこれはしょうがない。

 そして唇に至る訳だが、何もしなくても桜色なので、軽くリップクリームを塗って保湿程度でオケ。

 あとは肌かな。基本的に日本一美しいとされる秋田美人に負けないほどきめ細かく雪のような白さが密かな自慢ではある。でも頬の辺りは私の感情次第では薄く桃色になることがあるらしく、気をつけているところ。


 基本、化粧台に向かう前にスーツを着てはならない。手元が狂ってメイク道具が落ちてスーツを汚したら、着替え直さないとならなくなるからね。私がズボラなだけとか言わないでね。きっと仲間はたくさんいるはず。効率よく出勤準備する女性達はきっとナ.カ.マ❗️


 社会人としての最低限度のお化粧を終えた私は足の爪をチェックしてから(爪が伸びているとストッキングを電線させるから)黒のストッキングに脚を通す。そして肌着のTシャツを着て、白のYシャツに腕を通す。

 それから防寒ペチコートを履く。今までの着る手順が大事なのだ。肌着シャツとYシャツを着用後でなければ、この後スカートを履いた時に上着系をスカートの腰部分に入れられないでしょう?

 スカートが無事(知らぬ間に腰回りが太るとスカートのチャックやホックが締まらない&留められないになる)履けたのならスーツの上着を着用して終了っ‼️


 手提げ鞄にタブレット端末。それから今回の事件の一部始終の資料、検察側が提示した諸々の提出物のコピー、弁護士側の提出した供述書と証拠書類、主張をまとめのコピーを整理して区分けして保存したUSB(もちろん速記で書かれたものを写メしたもの、かつ複雑なロックがかかっている)。肩掛けカバンにはスマホ・お財布・電子定期券・自宅の鍵。出発準備完了‼️

「行ってきまーす」

 誰もいなくなる自室に外出を告げ、ブーツを履くと急いで自宅を出る私。


 誰も居なくなったはずの自宅で、洗濯カゴの中身は色物・下着などしっかり区分けされて洗濯され、とっ散らかった化粧台はまるでメイドでも雇ったかのように勝手に片付き、乱雑な室内も系統ごとに区分けされて本棚やケースに戻り、主人の帰りを待つのであった。
















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