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One more time 第14話 Side.亜蘭

…どうして、出ていくことが出来なかったのか。


電車を乗り継いでゆりのアパートに行くと、ちょうど部屋から出てきた2人に出くわした。


とっさに身を隠したのは、俺を見たゆりを混乱させたくないと、思ったから。


白鳥は、それほど俺に似ていた。

痩せ型で元々背も高いから、遠目で見れば誰もが見間違えるだろう。


「…そこ、段差になってるから気をつけて」


「もう…子供扱いしないでってば…」


聞き覚えのある喋り方…

俺以外に向けられる、熱っぽい視線、そして…



ふと、白鳥がゆりを抱きしめた。

迷わず、唇を合わせる2人を見て…俺は…






飛行機の時間が迫っていた。


向こうで暮らす準備は整っている。

…そこに、ゆりを加えるなら、どんな苦労も厭わなかっただろうに。



見つめ合い、キスを交わして、抱きしめ合う2人を見て、俺は…


このままそっとしておくのが、ゆりの幸せなんじゃないかと思ってしまった。





…もう一度、やり直す事が出来たなら。


期間限定の同居をしたいと、ゆりに連絡をしたあの日に戻ることができたなら…







白鳥を近づけることを、俺は絶対に許さないのに…








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