目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

2

 人間との関わりが面倒だと気づいたのは、人生で三人目の恋人と別れたときだった。

 恋はジェットコースターという言葉はどこで聞いたんだったか。言い得て妙だ。確かに恋人がいる間、俺の心は上がったり下がったりで落ち着きがなかった。


 安らぎを感じられる相手を選べなかったのは、俺に人を見る目がなかったせいだ。


 そんな俺はきっと、人を選んではいけなかったのだ。



 特急電車が爆音で通過する高架下にうずくまっているレイナを見つけた夜、俺は別に寂しかったわけじゃない。でも拾った。なんでだろう。


 犬を飼っていた少年時代を思い出したからかもしれない。


 1DKのアパートはペット不可物件だったが、関係なかった。俺はレイナを連れ帰り、風呂に入れた。牛乳石鹸で洗った。悪いけど、気のきいた専用のシャンプーなんてなかった。


 牛乳石鹸でもレイナはきれいになった。でも、茶色の毛が少しごわついたから、俺の使っているコンディショナーをうすーくつけてやった。

 そうしたら毛はさらさらふわふわになった。


 風呂上がりにはドライヤーもしてやった。

 それからメシも食わせた。これもやっぱり専用のなんてないからさ、俺の食うメシを、ちょっと分けてやる感じ。


 このときにはまだ、レイナって名前はつけてなかった。適当にポチって呼んでた。


 レイナと呼び始めたのは、寝顔が似ていると気づいたからだ。


 レイナ。俺のレイナ。

 俺だけに愛されて、俺だけを愛するペット。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?