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 レイナは別に怯えちゃいないように見えたけれど、とても静かだった。名前を呼んだり話しかけたりすると、「ワンッ」とか「ウォウ」とか小さく言うだけだった。


 俺がいる間はいつも、部屋の隅に座っていた。俺が仕事でいない間にどうしているのかは知らない。


 だから俺は、ネットでビーズクッションを買って部屋の隅に置いてやった。その上で寝るかと思ったのに、レイナは何が気に入らなかったのか、別の隅のフローリングの上で寝るようになった。



 レイナはキャベツや大根よりも肉が好きだった。当然か。俺だってサラダより焼肉が好きだ。

 肉を一緒にあげると、ご飯の食べもよかった。

 レイナがたくさん食べるのを見ていると、俺は何ともいえない、むず痒いような気持ちになった。



 レイナは散歩に行きたがらなかった。

 だから俺は仕事が終わった夜、レイナを車に乗せてドライブに行くようになった。

 助手席に乗せるのはさすがに危ないと思ったから、後部座席に乗せた。夜風が入るように少しだけ窓を開けてやると、レイナはそこからずっと外を眺めていた。


 近所の散歩は嫌がったのに、遊歩道のある遠い公園や遠くの埠頭なんかに連れていくと、レイナは歩きたがった。

 首輪やハーネスをしなくても、レイナは逃げなかった。俺より少し先を歩いて、時々、俺がついてきているか確かめるように振り向くのだ。


 可愛い。


 むず痒さの正体に気がついた。

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