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蒼開襟
恋愛スクールラブ
2025年06月08日
公開日
1.3万字
完結済
背が高いコンプレックスを持つカジカ。 華奢な女の子は皆可愛いから、自分なんて・・・そう思っていた。

第1話

わいわいにぎわう居酒屋いざかや店内てんない

おのおの々が手にグラスを持ち楽しんでいる。

間に合わせで参加していた睦原むつはらかじかは、隣に座っている友人メイをにらんだ。


『もう・・・こんなのごめんだからね。』

小さな声で叱咤しったするとメイが片手でおがむ。

『わかってる。ごめんって。』


テーブルの上には、所狭ところせましと食事が並べられている。

かじかの前に座っている宮崎みやざきという男は、この中ではリーダーらしく、皿に取り分けている。

睦原むつはらさんもなにか取る?』ふと声をかけられて、かじかは首を横に振る。

『いいえ、ありがとうございます。』


数時間前に少しだけ食事をしたせいで、飲み物だけで精一杯せいいっぱいだ。

終電前しゅうでんまえには帰りたいところだけど、結構けっこう盛り上がっている彼らに水を差したくなくて、タイミングをはかっている。


それにしても、大学生というのはこうして酒が入ると、こうも楽しそうなのか・・・。

かじかはことわって席を立つと、お手洗いに向かう。

用を済ませて席に戻ろうとした時、店の入り口が開いて、見たことのある男が入ってきた。


『遅いじゃん。葉月はづき。』

そう言われて、葉月優雨はづきゆうは整った顔で笑ってみせる。

大学でも有名な生徒。カメラで賞を取っていて、雑誌で見るような容姿のせいか、女生徒から熱い視線を寄せられている。


かじかはまぎれるように席に戻ると、目の前に座った葉月に軽く会釈えしゃくした。

『あー。こちら睦原むつはらさん。メイちゃんが連れてきてくれてね?』

『ども。』

葉月はづきは軽く会釈えしゃくしてから隣に座った女と話し始める。


見た感じチャラい葉月はづきは、好意を持っているであろう隣の女に、愛想笑あいそわらいで話している、どうやら苦手のようだ。

かじかは目の前に置かれたビールのグラスを見つめて、とりあえずこれがからになったらおいとましよう、と一人、うなづいて手を伸ばした。



グラスはからになったものの、くだをまいた連中のせいで帰るチャンスをのがしてしまい、やっとのことで会計が済むと、フラフラした連中をタクシーに乗せて腕時計を見る。


終電には間に合いそうだけど微妙びみょうだ。

仕方しかたなしに財布と相談して、タクシーに乗ることに決めると、隣に誰かが立った。


睦原むつはらさんもタクシー?』

葉月はづきはかじかの顔をのぞきこむ。

『あ、うん。終電はむずかしそうだし・・・。』

『ああ・・・確かに。良かったら送ろうか?』

『え?』

『確か家って・・・。』

葉月はづきはかじかの住所を知っていたらしく、口にした。


『え?何で?』

かじかが戸惑とまどって一歩後いっぽあとずさりすると、葉月はづきは両手を前で振った。

『あ。ごめん。くよな・・・俺、配送のバイト少ししてて、睦原むつはらさんのとこに一度届けたことがあって。だから変な意味じゃないよ?』


『そうなんだ。ごめん・・・知らないのに引いちゃって。』

『アハハ。俺、飲んでないからさ。車だから送るよ。』

『いいのかな?』

『いいよ。』


葉月はづき厚意こういに甘えて、彼の車に乗り込むと、家まで送ってもらうことにした。

『それにしても・・・結構けっこう気を使ってなかった?』

『うん?』


『ほら、帰るタイミング探してそうだったから。』

『ああ・・・そうなんだけど、だめだった。ほとんどの人が初対面しょたいめんで、何話していいかわかんないし・・・メイは即効そっこうで酔っちゃって、楽しそうに彼氏とイチャイチャしてて。』


『まあ仕方しかたない。うちのグループあんな感じだから。次誘われても断っていいから。』

『うん・・・考えとく。無下むげにもしたくないんだ、せっかくのえんだし。』

『へえ、古風こふうな感じか。あ、そろそろ着く。』


車がゆっくりと止まり、かじかは鞄を持つとドアを開いた。

『送ってもらってありがとう。初対面しょたいめんなのに・・・ごめんね。』

『うん、別に。じゃあこれで。』


葉月はづきは車に乗り込むと、すぐに行ってしまった。

かじかは車を見送りながら、玄関の鍵を開けると小さく息を吐く。

送りおおかみにならない人・・・初めてだ。


前の彼氏は毎回家に入りたがって、それが原因で喧嘩けんかして別れた。

まあ、でもあのルックスなら女には困ってないんだろうし。

かじかはベットに突っ伏すと、そのまま寝てしまった。


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