ただ傍にいてとだけ。
だから、かじかは
それでもぎこちない空気が時々、
お互いの
友達の距離感は恋人の距離とよく似ている。
手を
唇が触れそうな距離でなくても息がかかる。
春先の海、
かじかはぼんやりと空を
こうして、
顔を上げて、少し離れた場所にいる
きっとこの距離なら聞こえないから。
『
今まで名前では呼べなかった。
恥ずかしくて。
きっと彼が聞いていたら、口に出すことなんて出来なかっただろう。
『好きだよ。』
綺麗な風景に
卒業近くになると、
製作に追われて
かじかもその一人で、できれば
出来上がる頃には一般公開される。
公開日、客足の
『お、凄いな。これ。』
多くの生徒たちの力作だ。
かじかが頷くと
『さっき、かじかの作品見てきた。』
『ほんと?どうだった?』
『うん、良かった。俺の好きなやつ。』
『うん。教えてもらったとおりに、モチベ上げてる。』
『ハハハ。そっか。』
『あのさ・・・俺の作品見た?』
『ううん、まだ。さっき行ったとき混んでて見れなかった。』
『じゃあ、今からどう?ちょうど
『え?いいの?』
『うん、調整もかねて確認もするから。』
機材の調整が済んでいたようで、入れ替わりに状況説明を受けて
ブースは写真パネルがずらりと並んでいる。
その奥に
『違うんだ?』
『うん、今回は
二人きりで作品の前に立つ。
写真は一枚ずつ変わっていく。
色合いを変えて波が動いている。
『綺麗だね。』
『うん・・・。』
かじかは作品を見つめながら、
だからいつも、
ゆっくりと切り替わる写真の中に、遠く人影が映る。
かじかだ。
何か言いたげな顔が見えて、あの時だと気付いた。
きっと、かじかだけが気付いたことだろう。
撮られていたなんて知らなかった。
それでも聞こえていたはずがない、葉月は遠くにいたから。
作品がかじかの横顔で終わり、少し恥ずかしくなって
『どうかな?』
『うん、素敵だった・・・っていうか
『ハハ、いつも撮ってる。』
『え?』
『いつも、撮ってる。気づいてないのはかじかだけ。』
優しい瞳に、かじかは視線を
『ちゃんと教えてよ。恥ずかしいじゃん。』
『
『・・・わかるけど。』
ふと
『何で呼んでくれないの?いつも。』
『え?』
『あの時、名前・・・呼んでくれただろ?』
かじかの顔が一気に熱くなる。
ばれてた。
『な、き、聞こえてたの!!』
『聞こえないけど、そんな気がした。』
『なら、今呼んでよ。』
ぐっと手を
『呼んで。』
二人きりのブース。
誰もいない部屋を見渡して、かじかは
綺麗な顔は、優しくかじかを見つめている。
『・・・ゆ・・・。』
『うん?』
『
やっと出た言葉に、
『もう一回。』
『ゆ、
『かじか、好きだよ。』
『・・・うん。』
『ずっと好きだった。かじか、知ってただろ?』
するりと
『・・・知らないよ、そんなの。』
『知らない?まじか・・・じゃあ、今知ったんだからさ。言って。』
『え?』
『俺の事、どう思ってるか。』
ぎゅっと抱きしめられて、かじかは
きっとうるさい心臓の音は聞かれてる。
バレバレで
かじかは両手で
『・・・好き。』
『もう一回。』
『もう!』
『全部好きだ。まじで全部。照れ屋で可愛くて、ずっと何で俺のものじゃないんだろうって思ってた。』
『ちょ・・・。』
『そういうとこも好き。』
何度も好き言われて耳がくすぐったい。
心臓も顔も熱くて、息が止まりそうだ。
ぐっと引き寄せられて、吐息がかかる。
『いい?』
『何?』
『キス。』
ゆっくりと