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第2話 空を飛ぶf2の少女達

フィーネ達は、郊外の丘陵まで飛んできた。


透き通るような青空と白く浮かぶ雲、緑の草原と花々、木々とさえずる鳥たちが憩いの時間を与えてくれている。


フィーネと一緒にやってきた仲間はミランダ、アリエル、リーフ、レア、デイジーの五人のf2達、皆見た目は小柄で可愛らしい女の子であった。その中でもひと際小柄なリーフにフィーネが優しくお願いした。


リーフはフィーネの妹である。


「リーフ。前に相談したとおり、あなたにヒナって言う昔の女の子の役をやって欲しいの。私が軽い催眠術かけてなりきってもらうけど、何も心配しないでね」


「うん、大丈夫。やって」


妹のリーフは目を閉じた。髪がそよ風に揺れる。姉のフィーネはリーフの頭に自分の頭をつけてやはり目をつぶった。


空から見ているイオはルナに聞いた。


「フィーネにはf2という他に何か不思議な力があるのか? なんで比奈の事を知っているんだ?」


「分からない。彼女に不思議な力はあるのは間違いないけど、なぜそんな能力があるのか私達にも分からないのよ」


フィーネはリーフに呟いた。

「比奈、聞こえる? 目を開けていいよ。」


リーフが目を開けると、その意識は既に比奈になっていた。


「あなた、だあれ?」

「私はフィーネ。友達よ」

「フィーネさん?」

「そう、一番の友達よ。これから遊びましょう」

「遊んでくれるの? うれしいけど、私体が弱いから……」

「大丈夫よ。体を動かしてごらん。軽いはずよ」


比奈は恐る恐る体を動かしてみた。本当だ、体が軽く動く。こんなの久しぶり。


「背中に翼もあるのよ。飛んでみて」

「え? 翼?」

「そう。自由に動かせるよ」


比奈は肩越しに自分の背中を見た。――あった。大きな翼だ。羽ばたいてみる。


「本当だ。自由に動く、すごい……」

「この四人も友達よ。ミランダ、アリエル、レア、デイジー」

「ヒナ、よろしくね」

「さあ、ヒナ。この広い世界で自由に飛び回ろうよ」

「うん。みんなと一緒に行く」


比奈は草原の上をゆっくりと、自由をかみしめながら飛んだ。周りには五人の友達が一緒に飛んでいる。


前の方を飛んでいたフィーネが丸い箱のスイッチを押して遠くに投げた。すぐさま他の子も同じものを次々に投げた。


するとその箱からポンと音がして粉が四方八方に飛び散り、その粉はすぐさま花びらに変身した。沢山の色とりどりの花びらが辺りに舞った。


普通の花びらだけではなく光をきらきらと反射する花びらも交じっている。


「うわあ、きれーい」


花びらに包まれ、比奈は感嘆の声をあげた。


「アリエル。ハイパープロジェクションをお願い。音楽も」

「オーケー、フィーネ」


アリエルはやや大きな筒状の装置を持って、少し離れたところから水平線に向かって、何か光のようなものを放射した。


すると一帯の木々や山が鮮やかな紅葉の錦絵に変わった。さらにスカイパスが虹のような色で光輝いた。


美しい音楽が空中に響き渡る。


「夢みたい。こんな世界が……」


比奈は感動のあまり声が詰まった。


どこからともなく鳥たちが群れで飛んできた。


フィーネが叫ぶ。

「ミリオ!」


すると巨大な白い『えい』ミリオが空中を飛んできた。


イオがルナに呟く。

「えいが空を飛んでいるぞ。それも馬鹿でかい。あれも進化なのか?」

「いえ。あれは人工的に改良されたものよ。生体と特殊な浮遊技術が組み合わされているわ」


「何の為に?」

「色々な目的よ、芸術とかペットの要素もあるし、監視とか実用的な役割もある」


他にも多種多様な空を飛ぶ生き物が比奈達の周辺を飛び回った。


比奈を中心にf2達は幻想的な世界を心行くまで楽しんだ。


比奈は生まれてからこんなに楽しく笑って遊んだことが無かった。


笑顔が弾け、笑い声が絶えることなく続いた。


イオは再びルナに聞いた。

「比奈の顔を思い出したよ。まさにあのリーフって子の今の顔や姿は比奈そのものだ。時を経て生まれ変わったのか?」


「いえ、フィーネ自身が比奈の生まれ変わりだからリーフは違うわ。多分、彼女が自分の中にある比奈の心か何かを一時的にリーフに移植した様な感じじゃないかな」


「何の為にやっているんだろう?」

「さあ。比奈の為にやっているっぽいけど、リーフは比奈本人じゃないし……」

「時間を移動できるルナはこの後の展開は当然分かっているんでしょ? 理由も分かるのでは?」

「いい質問ね」


ルナは丁寧に説明した。


「私達、転生を補助する者達は、遠い過去から未来まで起きることを見ることができるんだけど……」


少し間を置いてフィーネを見てからイオをじっと見つめ直した。


「何故かこの時代から先の未来は見ることができないの」

「え、どういう事?」


「歴史が同時録画されている状態だとすると、この時代が録画の最後なの。その先の情報が取れないのよ。ここから先の未来には行けない」

「録画の最後……」


「今時点での最新はここだから、これからどうなるかは私達も分からない。ここからは未知の時代なんだ。ただし、これから私達は過去に行って仕事をした後またこの時代に帰って来るけれど、その頃には数年先には行くことができているよ」未来も、過去も、ある意味現在進行形らしい。


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