「罠があるわ」
女の持っている罠発見装置からビービーと警告音が鳴り響く。
目の前にあるのは厳重な扉。ダンジョンの最奥部に位置している部屋へ続く扉だった。
「解除はできるのか？」
女の後ろに居た男二人が神妙な面持ちで女へと告げる。
「……扉の先にある罠のようね。解除は……難しいかな」
ここまできて、たかが罠のひとつで引き返すなどはできない。
この先はおそらくボス部屋、あるいは宝物庫であろう。
「……罠の種類がわからないわ。被害覚悟で開けるしかないわね」
そう呟き女が扉に手を掛けようとするが、それを男の一人が制止した。
「いや、ここは俺が開けよう。図体ばかりでかいからな。何かあったら俺を盾にしてくれ」
そう言うと女ともう一人の男を後方へと移動させ、自分は意を決して扉のノブを回した。
開いた瞬間、頭上にぬめぬめとした液体のようなものが振りかかる。
しまった、罠だ！
気付いた瞬間にはもう遅く、男の着ていた鎧や衣服は瞬時に溶け始め、白い煙となって消え去った。
あとには筋肉が凛々しい全裸の男だけがその場に立っていた……。
『なんでお前が引っかかるんだよ！！！！！！！！！！！！！』
どこからともなく悲痛な声が聞こえ、ダンジョン内に響き渡ったとかなんとか……。
◇
いつもご贔屓にして頂きまして誠にありがとうございます。ダンジョントラップ株式会社の
本日は
商品ナンバーH7SU1A1MU、製品名『スライミック・ドレストリッパ―Mk.Ⅱ』。キャッチコピーは『第一印象は”肌”で決まる……着込んでいる場合じゃない！ 即時発動！ 秒速装備解除！』です。
製品説明をさせて頂きます。
こちら弊社で開発致しました特殊な無定形型魔法生物、通称『スライム』を使った商品となります。
『スライミック・ドレストリッパ―Mk.Ⅱ』は、対象者の衣服及び金属製の装備を分解・溶解・気化させ、『ありのままの姿』を世界に解き放つために設計された革新的防具解除トラップとなります。
外部からの魔法強化や神聖耐性を問わず、物理・精神的防護を一括解除致します。
適用対象は、金属鎧、布衣、聖布、軽装皮鎧、羞恥心、自尊心などでございます。
早速のコメントありがとうございます。
『適用対象に下着は含まれますか』とのご質問ですね。
布製の下着などは対象に含まれ融解されます。金属製の貞操帯などをご使用の際でも対象に含まれますのでご安心してご利用頂けます。
本製品の使用方法と致しまして、通路や扉の上部、宝箱、浴場などに本体を設置して頂き、付属の『スライミック・カプセル』を本体注入孔に挿入後、対象者が接近すると自動で対象者目掛け散布されるものとなります。
こちら必ず本体に『スライミック・カプセル』を挿入してのご使用をお願い致します。
『スライミック・カプセル』は特殊な容器をしようしておりますので、万が一個別で使用した際にお客様が浴びてしまうと悲惨なことになりますので、本体に設置してのご使用をお願いしております。
また、お客様が罠に掛かった場合、弊社は一切の責任を負いかねますのでご了承の程宜しくお願い致します。
ご質問ありがとうございます。
『スライムの使用期限はあるのか』でございますね。
こちらの製品の使用期限でございますが、理論上は半永久的にご使用することが可能です。
しかしながら、中の『スライム』が徐々に経年劣化で蒸発していきますので『スライミック・カプセル』は一年毎の交換を推奨しております。
もちろん、『スライミック・カプセル』単体での販売も行っておりますので合わせましてご利用頂けますようお願い致します。
次に、主な副作用を説明させて頂きます。
人間の皮膚に触れても害はございませんが、対象者の社会的信用に深刻なダメージを与えることがございます。
また、特定宗教圏では神聖視される可能性がございます。
自我崩壊、無言の帰還、他者からの視線地獄など、軽度から深刻な羞恥リアクションを観測して頂くことが可能です。
本製品は冗談と羞恥の境界線を瞬時に滑らかに溶かします。
ご質問ありがとうございます。
『スライムが衣服類を溶かすのに掛かる時間はどのくらいか』でございますね。
対象者の装備の着込み具合にもよりますが、早くて三秒。遅くとも三〇〇秒の間にすべての衣服を融解致します。
再度のご質問ありがとうございます。
『これは変態用のアイテムではないのか』でございますね。
いいえ、違います。これは『戦術的羞恥誘発装置』となります。
勘違いをなさらないようお願い致しますが、こちらの製品、性別種族問わずその効果を発揮致しますのでご理解の程宜しくお願い致します。
こちら大変人気の商品となっておりまして、在庫が残りわずかとなっております。
ご購入を検討されているお客様はお急ぎ下さい。
本日の配信は以上となります。
ダンジョントラップ株式会社の
ありがとうございました。失礼致します。
ご覧の番組は『ダンジョントラップ株式会社』の提供でお送り致しました。
