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第7話 話し合い

「じゃあ、代表も決まったので……ここから話し合いをするよ」


 私は雛乃ちゃんに書記を任せ、皆の意見を聞いていく。すると、最初におずおずと手を上げたのは、栞さんだった。


「私は……できたら裏方で……」

「栞ちゃんはそれが良い!」


 渚くんが鼻息荒く同意する。ああ、可愛い栞さんを見せたくないのか……。いや、それを言ったらメイド服を着た雛乃ちゃんなんて……直視できるだろうか、いやできない。けれど、絶対見たい……可愛いだろうからな……。


「た、確かに表へ出なくても良い人は作っても良いかもしれませんね……」


 雛乃ちゃんもその意見には同意するみたいだ。ああ、私は雛乃ちゃんのメイド姿、見たいのだが――。


「その意見は紗夜さんにも提案しよう。他には――ああ、麗奈さん」

「衣装は全部手縫いにするのかしら? もし、裁縫科の手で足りないのであれば、私の家の者にお願いできると思うわ」

「流石麗奈ちゃんやね……!」


 朱音さんが納得するのも無理はない。確か麗奈さんのご両親は世界的に有名なファッションデザイナーだったな。確か二年後、社交界に参加すると聞いたことがある……デビュタント、というやつだったか。


「そこは紗夜さんに聞いてみよう。早めに返事ができるようにする」

「お願いするわぁ〜」


 それ以外にも幾つかの話が挙がった後、チャイムが鳴った。


「こんな時間か……じゃあ、今の話を紗夜さんのところへ持っていこう。他に何かあれば、私か雛乃さんに言って欲しい」


 全員の顔を見ると、問題なさそうな表情をしている――いや、一人だけ何か言いたそうな翡翠さんがいるけれど……隣の朱音さんに睨まれて、口をモゴモゴさせていた。

 私は「では、解散」と告げて席へと戻る。隣の雛乃ちゃんは、席で必死に皆の意見を書いてくれていたのだが、書き終えたらしく一呼吸ついていた。


「雛乃さん、書記助かったよ」


 色々な意見が出ていたから、書くのも大変だったろうに。こちらからチラリと見えるノートには、綺麗に見やすく先程の話がまとめられている。私もノートをまとめるのは見易い方だと思うのだが……何故か雛乃さんには敵わないんだよな。


「ううん……私は前に出るよりまとめる方が得意だから、任せてもらえて嬉しかったよ?」


 ――彼女に褒められるより、ずっと嬉しい気がした。

 満面の笑みで「はい、どうぞ」と言って渡されたノートを私は受け取る。


「ああ、ありがとう……」


 その時の私の表情は――。周囲がニマニマと見ている姿から察して欲しい。

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