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恋を知った偶像
恋を知った偶像
吉華
恋愛現代恋愛
2025年06月15日
公開日
1.4万字
完結済
ファンの事を好きになってしまったアイドルが、編入した学校で教師をしていたファンと再会する話。 お題をこう解釈する生き物もいるんだなぁという事で、何卒。

プロローグ

 テレビの中で歌っている、キラキラの女の子たち。可愛い衣装に身を包み、一生懸命歌って踊るその様子は、いつだって私を元気づけてくれた。

「あら、また歌ってるの?」

「愛佳はアイドルが大好きねぇ」

 アイドルがテレビに出る度に、私は画面の前で真似して歌い踊っていた。幼稚園で歌う時は一番大きな声で歌ったし、運動会のダンスは家で何度も練習した。歌うのが楽しくて、踊るのが楽しくて、仕方なかった。

「皆を夢中にさせちゃうぞ!」

 憧れが夢に変わったのは、小学校低学年の時。少し離れたショッピングモールで当時好きだったアイドルがミニライブをするという事で、母が連れて行ってくれたのだ。画面越しでない彼女を見るのは、彼女の歌を聴くのは初めてだったので、終始興奮していたのを覚えている。

「今日は来てくれてありがとう」

 ミニライブ開催前に配られた整理券を手に、彼女と握手するための列に並んだ。彼女は、私の前に並んでいた男の人にも女の人にも、大人にも子供にも、分け隔てなく声をかけてくれて、にっこり笑いながら握手してくれた。

「あ~やっぱり可愛い!」

「最高!」

「一生推す!」

「大好き!」

 彼女と握手した人達は、皆笑顔でそう叫んでいた。もちろん私も笑顔だった。彼女は、歌うだけで、踊るだけで、握手するだけで……こんなにも沢山の人を笑顔に出来るのだ。


 それが、まるで魔法使いのようだと思った。

 そんな、素敵な人に私もなりたいと願った。


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