テレビの中で歌っている、キラキラの女の子たち。可愛い衣装に身を包み、一生懸命歌って踊るその様子は、いつだって私を元気づけてくれた。
「あら、また歌ってるの?」
「愛佳はアイドルが大好きねぇ」
アイドルがテレビに出る度に、私は画面の前で真似して歌い踊っていた。幼稚園で歌う時は一番大きな声で歌ったし、運動会のダンスは家で何度も練習した。歌うのが楽しくて、踊るのが楽しくて、仕方なかった。
「皆を夢中にさせちゃうぞ!」
憧れが夢に変わったのは、小学校低学年の時。少し離れたショッピングモールで当時好きだったアイドルがミニライブをするという事で、母が連れて行ってくれたのだ。画面越しでない彼女を見るのは、彼女の歌を聴くのは初めてだったので、終始興奮していたのを覚えている。
「今日は来てくれてありがとう」
ミニライブ開催前に配られた整理券を手に、彼女と握手するための列に並んだ。彼女は、私の前に並んでいた男の人にも女の人にも、大人にも子供にも、分け隔てなく声をかけてくれて、にっこり笑いながら握手してくれた。
「あ~やっぱり可愛い!」
「最高!」
「一生推す!」
「大好き!」
彼女と握手した人達は、皆笑顔でそう叫んでいた。もちろん私も笑顔だった。彼女は、歌うだけで、踊るだけで、握手するだけで……こんなにも沢山の人を笑顔に出来るのだ。
それが、まるで魔法使いのようだと思った。
そんな、素敵な人に私もなりたいと願った。