「はーい、リオンのダンジョン配信、午後の部スタート！　日本平ダンジョン三階、東地区に突入だよー！　今日もミリアちゃんとマナミと一緒、ガンガンいっちゃうぜ！」

　ドローンが僕たち三人を追いかけ、ヒカリゴケの黄緑色の光が薄暗い通路を照らす中、東地区へと進む。

　東地区は西地区よりモンスターの出現率が高く、ちょっと緊張感がある。視聴者のコメントも盛り上がってる。

『東地区ってやばいんだろ？』

『アイス・リザードとか出るらしいな！』

『リオンちゃん、気をつけてー！』

『ミリアちゃん、マナミちゃん、かわいい！　頑張れ！』

「はいはい、みんなありがとう！　気をつけて進むよー。ミリアちゃん、マナミ、準備OK？」

「はい、リオンさん！　剣、握ってます！」

　ミリアが魔鉄のショートソードを構え、キリッとした表情。

「お兄ちゃん、私もバッチリ！　荷物持つだけだけど、気合入ってるよ！」

　マナミが革鎧のポーチを叩いてニヤリ。

　東地区の通路は少し狭く、ヒカリゴケの光もまばらだ。ヘッドライトの光を頼りに進むと、突然、冷たい空気が漂ってくる。モンスターの気配だ。

「リオンさん、なんか寒い……！」

　ミリアが少し震えながら言う。

「うん、アイス・リザードの気配だね。みんな、構えて！」

　通路の奥から、青白い鱗に覆われたトカゲ型のモンスターが姿を現す。アイス・リザードだ！

　こいつは冷気を吐いて攻撃してくるやつで、動きが素早い。配信コメントも一気に加速。

『キター！　アイス・リザード！』

『リオンちゃん、剣でガツンとやっちゃえ！』

『ミリアちゃん、リザードとは初戦闘か？　応援してるぞ！』

「よし、ミリアちゃん、僕が正面からいくから、横からフォローして！　マナミは後ろで荷物管理、頼むよ！」

「了解、リオンさん！」

「任せて、お兄ちゃん！」

　ミリアが剣を握り直す。

　マナミがマジック・バッグを肩にかけ直す。

　僕は魔鉄のショートソードを手に突進。アイス・リザードがシュッと冷気を吐いてくるけど、革鎧のオーガ革が冷気を少し和らげてくれる。横に飛びつつ、剣で一撃！

「えいやっ！」

　剣が鱗に当たるが、硬い！　アイス・リザードが反撃で尾を振り回してくる。

　ミリアが横から飛び出し、ショートソードで尾を狙う。

「リオンさん、今です！」

　ミリアの剣が尾の付け根に命中。アイス・リザードが動きを止めた隙に、僕が剣を振り下ろし、頭部にクリーンヒット！

　ドサッと倒れる。

「やったー！　ミリアちゃん、ナイス連携！」

「ふふ、ありがとう、リオンさん！」

　僕はハイタッチを求める。

　ミリアが少し照れながら手を合わせる。

『すげえ！　連携バッチリ！』

『リオンちゃん、ミリアちゃん、かっこいい！』

『アイス・リザードの肉、トカゲ丼の材料だろ？』

「そうそう、アイス・リザードの肉はトカゲ丼のメイン素材！　マジック・バッグにガッツリ詰めるよ！」

　僕は倒したアイス・リザードの肉を解体し、マジック・バッグに放り込む。マナミが目をキラキラさせて見てる。

「お兄ちゃん、これ、めっちゃ美味しそう！　またトカゲ丼食べたい！」

「はは、帰ったらギルド亭で食べようね。よし、次行くぞ！」

　さらに奥へ進むと、壁に紫色に光るキノコが群生してる。ヒカゲタケだ！

　この魔法キノコはポーションの素材として高値で取引される微レアアイテム。

　視聴者も興奮してる。

『ヒカゲタケキター！』

『これ、ちょっと高いやつじゃん！』

『リオンちゃん、金持ちへの道まっしぐら！』

「ふふ、ヒカゲタケは一株で五千DPくらいかな？　丁寧に採るよー！」

　マツタケみたいなノリだ。

　僕は魔道具のナイフで根元から慎重に切り取り、マジック・バッグにしまう。マナミも手伝ってくれて、十株ほどゲット。

「リオンさん、これでまたお金持ちですね！」

　ミリアが笑顔で言う。

「うん、これでマナミの鎧ももうちょい強化できるかな？」

「お兄ちゃん、私の分まで考えてるの？　やさしい！」

　マナミが抱きついてくる。配信コメントが『かわいい！』で埋まる。

　う、恥ずかしいって！

　さらに奥へ進むと、突然、視界が開ける。目の前に広がるのは地底湖だ。青く輝く水面がヒカリゴケの光を反射して、幻想的な雰囲気だ。ドローンが湖を映し出し、視聴者がどよめく。

『うわ、めっちゃ綺麗！』

『地底湖、初めて見た！』

『リオンちゃん、ここで泳ぐ？』

「泳がないよ！　めっちゃ冷たいし、モンスターいるかもしれないからね！」

　僕は笑いながらカメラにウィンク。

　水棲モンスターに食べられたら大変だ。

「リオンさん、ほんと綺麗ですね……」

　ミリアがうっとりした顔で湖を見つめる。

「うん、ダンジョンってこういう神秘的な場所もあるんだよね。マナミ、写真撮っときな！」

「はーい、お兄ちゃん！」

　マナミがメガネ型端末で湖をパシャパシャ撮影。

　湖の周りを一通り探索するけど、モンスターの気配はなし。少しホッとしつつ、時間もいい感じなのでダンジョン村へ戻ることに。

「よし、今日はここまで！　配信のみんな、楽しんでくれたかな？」

『超楽しかった！』

『地底湖、最高！』

『次も期待してるぜ、リオンちゃん！』

　配信を終了し、僕たちはダンジョン村へ戻る。ギルド亭の休憩室で一泊する予定だ。トカゲの天丼を三人でガッツリ食べる。

　今回は天ぷらにしたもので、甘みのある醤油タレで、こっちも美味しかった。

「ふぅ、美味しかった！　ミリアちゃん、初のダンジョン村泊まり、どう？」

「ちょっとドキドキですけど、楽しかったです！　リオンさん、マナミちゃん、ありがとう！」

　ミリアがにっこり。

「お兄ちゃん、私も楽しかった！　明日も冒険するんでしょ？」

「うん、でも今日はゆっくり休もう。マジック・バッグのおかげで荷物もバッチリだし、明日もガンガンいくよ！」

　ギルド亭の簡易ベッドに寝転がりながら、僕は思う。

　斎木さん、僕、ミリアちゃんやマナミと一緒に、ちゃんと冒険できてるよ。

　少しずつ、強くなってるかな？

　明日はもっとすごい冒険、してみせるから！