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第31話 東京出張


「はーい、リオンのダンジョン配信、今日は特別編! チーム『スターライト』、冒険者ギルドからの依頼で東京の新宿ダンジョンへ出張だよ! 新幹線からの配信、めっちゃ楽しみにしててね!」


 ドローンが新幹線の車内を映し、窓の外には静岡の街並みが流れていく。

 僕リオン、ミリア、マナミが新幹線の座席に並び、マジック・バッグを膝に置いてワクワクした表情をしている。

 視聴者コメントがメガネ型端末に流れ始める。


『スターライト、東京キター!』

『リオンちゃん、新幹線でもかわいい!』

『ミリアちゃんのミスリウム・ソード、見たい!』


 ミリアがマジック・バッグから出してもらったミスリウム・ソードを軽く手に持ち、窓の外をチラッと眺める。

 ひと撫でして、またマナミに渡してしまってもらう。

 刀剣の類は移動させるために持ち運ぶことは可能だが、一応、銃刀法である程度制限されている。

 こういうときはマジック・バッグに入れておくに限る。


「リオンさん、東京のダンジョンって初めてです。兄も新宿ダンジョンには行ったことあったのかな……」

「ミリアちゃん、斎木さんならきっと行ったことあるよ。レベルSダンジョンだから、僕たちブロンズ級には荷物運搬係がメインだけど、情報集めも頑張ろう! マナミ、準備OK?」


 マナミがマジック・バッグを叩いてニヤリと笑う。


「お兄ちゃん、ポーションもおにぎりもガッツリ詰めたよ! ポーターとしてバッチリ働くから、視聴者のみんな、応援してね!」

『マナミちゃん、ポーター最強!』

『スターライト、東京で暴れろ!』


 新幹線が富士山を通過する。ドローンが窓の外を捉え、雄大な富士山が雲間に見える。

 僕がカメラに向かって叫ぶ。


「みんな、見て、富士山! めっちゃキレイ! おっきい! 静岡から東京への旅、テンション上がるよね!」


 ミリアが目を輝かせ、マナミが窓に張り付く。


「リオンさん、ほんとキレイ! なんか冒険の始まりって感じ!」

「お兄ちゃん、写真撮ろ! 視聴者のみんなにも見せたい!」

『富士山やばい!』

『スターライト、最高の旅!』


 ドローンが車内と富士山のツーショットを撮影。

 新幹線はトンネルの後、熱海を通過し、海岸線のキラキラした景色が一瞬映る。


「熱海の海、めっちゃキレイ! 冒険の前にこんな景色見れるなんて、最高だね!」


 視聴者数が一万八千人に達し、スパチャがポンポン飛んでくる。

 しばらく神奈川県を通過した後、新幹線が品川駅に到着。

 スターライトの三人はマジック・バッグを担いでホームに降り立つ。

 都会の喧騒に少し圧倒されながら、電車で新宿ダンジョンへ向かう。

 新宿ダンジョン入り口は、副都心のビル群を背景に意外にも緑に囲まれた大きな公園の中だった。

 冒険者ギルド新宿支部の管理棟があり、調査員や冒険者が忙しなく動いている。

 僕がドローンを操作し、配信を続ける。


「ここが新宿ダンジョン、レベルSの超大型ダンジョンだよ。スターライトは荷物運搬係だけど、調査員の間を動きながら情報集めるよ! 視聴者のみんな、引き続き応援よろしく!」


 受付の臨時テントの中で、ギルド職員の女性がスターライトを迎える。

 テントと言っても、あの小学校の運動会とかで見かけるタイプのテントだ。

 猫耳がない普通の受付嬢だが、キビキビした動きが頼もしい。

 さらに周りには猫耳の係員が何人かおり、さらにエルフの女性も二人ばかり見える。

 冒険者ギルドはこうした異種族扱いされる人々の就職あっせんをしていて、こうして自分たちでもよく雇用している。


「スターライトの皆さん、荷物運搬係ね。調査員の装備や食料を各ポイントに運んで、素材の回収もお願い。マジック・バッグがあるから助かるわ」

「了解! スターライト、ガンガン動くよ! ミリアちゃん、マナミ、行くよ!」


 三人はテントを出て、調査員たちの間に分け入り、荷物運搬を開始。僕が食料やポーションの入った箱を運び、ミリアが調査員にペットボトルを配り、マナミがマジック・バッグに素材を詰め込む。調査員の一人が、休憩中に声を潜めて話しかけてくる。


「スターライトの配信、見たよ。斎木直樹の件、改革派の闇、気をつけな。それと、実は新宿ダンジョンで、TS病と魔力結晶の関連が噂されてるんだ。リオンちゃん、だよね?」

「TS病と魔力結晶? 兄がそんな研究に関わってたんですか?」

「いや、斎木さんが直接ってわけじゃないけど、魔力結晶の暴走がTS病の原因かもしれないって話が、研究者の中でチラホラ。新宿ダンジョンで採れる高濃度魔力結晶が、なんか怪しいんだよね」


 ミリアがハッと顔を上げる。

 僕がドローンを寄せて、声を拾う。


「視聴者のみんな、聞いた? TS病と魔力結晶、関係あるかも! スターライト、調査員の話聞きながら、もっと情報集めるよ!」

『TS病の謎、キター!』

『スターライト、真相究明ガンバ!』


 マナミがおにぎりを調査員に配りながら、ニヤリ。


「お兄ちゃん、ミリアちゃん、調査員のご飯タイムは情報収集のチャンス! ポーターもガンガン聞き耳立てるよ!」


 調査員たちの間を動き回りながら、スターライトは荷物を運び、素材を回収する。

 ゴブリン・マジシャンの魔石やハイシープの毛皮をマジック・バッグに詰め込む。

 別の調査員が、食事中にポツリと漏らす。


「マギテックが新宿ダンジョンの魔力結晶を独占しようとしてるって噂だ。改革派がバックについて、データ隠してるらしい」

「みんな、マギテックと改革派、また怪しい動き! スターライト、TS病と魔力結晶の真相、絶対突き止めるよ!」


 僕がカメラに向かって叫んだ。

 視聴者数が二万人を突破し、コメントが加速する。

 スターライトは荷物運搬を続けながら、新宿ダンジョンの闇に一歩近づく。

 夜が更け、調査初日は終了。テントに戻り、疲れた体を休める。


「ミリアちゃん、マナミ、今日の情報、めっちゃ大事だね。明日もガンガン動いて、斎木さんの想い、TS病の謎、全部解き明かそう!」

「はい、リオンさん。兄が戦った真相、私たちで絶対暴きます!」

「お兄ちゃん、ミリアちゃん、ポーターも全力で応援! 東京の冒険、めっちゃ楽しいね!」


 ミリアがミスリウム・ソードを握り、頷いた。

 マナミがおにぎりを頬張りながら笑う。

 視聴者コメントが『スターライト、最高!』で埋まり、初日の配信を締める。

 明日の調査に備え、スターライトの決意はさらに固まる。


 しばらく経費で東京のホテルに宿泊だ。白いシーツの大きなベッドで寝るもんね。

 高層ビルから見える東京の夜景も綺麗。それでは、おやすみなさい。


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