「
神崎さんが何か物騒なことを言い放っている。
俺はというと全く着いて行けずに困惑するのみだ。
なんなんこれ?
しかも世界がセピア色に染まっているような気がする。
「下がって」
そう言って彼女が前に出る。
そして俺はようやくそこに事態を正しく認識したのであった。
「なんだ……? こいつらは……」
俺の目の前にいたのは、鬼のような風貌をした“何か”だった。
と言うか、空想上の
その体躯は2メートル近い。
額からは2本の角が飛び出している。
筋骨隆々とした体は、どこぞのプロレスラーを彷彿とさせる。
右手には直前に俺に対して振るったであろう
「
あの2体はそれぞれ虚無と羅刹というらしいが、どちらがどちらなのかまでは分からない。
ついていけない俺を1人置き去りにして、パンツスーツ姿だった神崎さんは、その姿を変化させていく。背中からは光り輝く2枚の翼が出現し、硬質化した衣のような、鎧のようなものが彼女の体を包み込んでいく。
その色は白銀。
さらに彼女の黒髪は金色に染まり、極め付けは頭上に輝く天使の輪が輝いている。
その姿はどこかロボっぽい。
ったく魔法少女かよッ!
いや、天使か。
うん。天使だな。
なんたらに変わってお仕置きしたり、
もちろん、姿を変えていく彼女を待っているほどの親切さを持ち合わせているはずもなく、その鬼のうち一体が手に持っていた
ガキッ!!
物騒な音を立てて金属と金属がぶつかり合うような音が響く。
「
今、神崎さんに仕掛けた鬼は
見た目は何処か幽霊のような気配を感じる半透明な幽鬼的存在。
その
そしてそのまま、
余裕の表情を崩さない彼女は右手に大きな銃のようなものを虚空から出現させると、鬼に向けてぶっ放す。
ド派手な音を立てて、その銃口から光線がほとばしる。
まるで、特撮映画で見たレーザービームのような、はたまた白い悪魔のビームライフルのようなそれは鬼の体を貫くと、向こうにあった街路樹をも薙ぎ払う。
引き裂かれた腹からは臓物が飛び出していた。
うわ。グロいな。臭そう……じゃなくて痛そう。
と言うかどう見ても痛いと思います。
だが、彼女は余裕の表情を崩さぬまま、銃口から光線を出したままに、銃を横薙ぎに払った。こちらから見ていると光の剣でその体を薙ぎ払ったように見えた。
その一撃で鬼の1体が一瞬で塵と化し、後には黒い石のような何かが残るのみ。
仲間がやられるのを見たもう1体の鬼は、慌てた様子で神崎さんの方へ躍りかかってきた。
「今度は
こちらの方が物質的で存在感と迫力がある。
腕が4本もあり、大剣や棍棒のようなものを左右の手に握りしめている。
無機質なそれは、月の光を受けてぬらりと鈍い光を放っていた。
と言っても本物の剣なんて見たことがないので、いまいちピンと来ない。
しかし、神崎さんはあまりにも大振りなその一撃を軽々とかわすと、右手に持っていた銃を
そして有無を言わさずトリガーを引く。
その瞬間、
2体と言っていたのでこれで終わりかと思ったのも束の間、首を失った体が不意に動き出す。
「チッ!」
神崎さんは舌打ちを1つすると、光に包まれた
【
その左手から発せられた光は、
武器を使った様子がないので、もしかしたらあれが魔法というヤツなのだろうか?
その体を黒い
よく見ると、彼女の左手には黒く輝く石のようなものが握られていた。
その姿に
「さぁ、帰りましょうか」
その言葉にふと我に返ると、いつのまに戻ったのかいつものパンツスーツ姿の神崎さんが微笑んでいたのであった。
目の前の現実に驚きがついてこない。
一体何が起こっているんだろうね?