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俺のじいちゃんの家の裏山にダンジョンが見つかった!
俺のじいちゃんの家の裏山にダンジョンが見つかった!
厘/りん
現代ファンタジー現代ダンジョン
2025年06月16日
公開日
1.3万字
完結済
中学二年の夏休み。俺は、じいちゃんの住んでいる田舎へ遊びに行った。 一年前にばあちゃんを亡くして、落ち込んでいるじいちゃんのために動画配信を勧めてみた。盆栽や自然の風景に少しずつ視聴者が増えていった。 ある日、偶然じいちゃんの家の裏山にダンジョンを見つけてしまった。じいちゃんと一緒にそこへ入ってみると…?

第1話 夏休みの冒険



  「じいちゃん! 俺が補助魔法つけるから頑張って!」

 「おお! まかせろ!」


  俺が肉体強化魔法、防護壁魔法、武器防具の強化魔法を唱えると、じいちゃんは俺達の何倍もある大きなトロル魔物へ向かって行った。

 その後ろ姿は、か弱い老人の姿ではなく、大きな魔物と対峙するだった。



 ◇◇◇◇



 二週間ほど前。


  俺は前から計画していたことを、実行した。

 父が会社へ行って、母もパートに出かけた。誰もいなくなったのを確認して家から出た。

 「これでよし!」

 リビングにあるテーブルの上へ、両親宛の手紙を置いた。


  住んでいる場所から二時間電車に乗って、それからまた違う電車に乗り換えて、さらにバスに乗って着くような場所。

 「じいちゃん――!」

 「おお! 来たか、一真かずま

 久しぶりに会う、離れて暮らす田舎に住むじいちゃんの元へ俺は駆け寄った。中学二年の夏休み。俺はじいちゃんの住む田舎で過ごそうと、両親に黙ってやってきた。絶対に反対されると思ったから。


  「よくきたなあ! 背が高くなったんじゃないか?」

 じいちゃんは、俺の背中をポンポンと叩いた。じいちゃんが乗ってきた、後ろに荷台がある軽トラに乗ってじいちゃんの家へ向かう。

 最寄駅からはだいぶ遠く、じいちゃんの家の周りは何もない。あるのは自然ばかりだ。だけど下水道や電気、ガスやネットなど生活するには不便はない。俺に必要なものがあるという理想的な環境だった。


 どこまでも続く、田んぼの真ん中の一本道を進んで行った。


 じいちゃんの家へ着くと、もう夜だった。ガランと広い家。ばあちゃんが亡くなってよけい広くなった気がする。

 「部屋だけは余っているから好きな部屋を使ってくれていいぞ、一真」

 「ありがとう」

 俺は仏壇のある部屋に行って、ばあちゃんの位牌へ手を合わせた。


  じいちゃんは畑を持っていて、野菜を作って道の駅などで売っているらしい。なかなか好評と聞いた。――俺は、明日からどうしようかな。

 じいちゃんの手伝いはするつもり。暇なときは少しゲームをして……。

  でも、じいちゃんと一緒に何かしたい。

  「あ、そうだ!」

 俺は良いことを思いついた。明日が楽しみだ。 虫の鳴き声を聞きながら、いつもより寝つきが良く眠れた。




  「え! ネット配信?」

 次の日、じいちゃんに俺が昨日の夜に思いついた事を言ってみた。

 自然しかない家の周りだけどネット環境は大丈夫だし、逆に新鮮なのでは? と思った。

「ワシのような年寄りの配信なんか、観ないじゃろう……」とじいちゃんは乗り気じゃなかったけれど、自然を観て癒される人もいるし! と説明した。


  「それに意外と、お年寄りの配信者さん多いよ」も付け加えた。「……それならば」と言ってじいちゃんは、許可をしてくれた。

 いくつかルールを決めて始めることにした。


  初めは盆栽や庭の木の手入れなど、じいちゃんの好きなものから始めた。顔にはサングラスをかけて、説明中心の配信。俺は映す役割。


  じいちゃんの説明は分かりやすくてだんだん視聴者が増えていった。

 『癒されます~!』

 『なるほど!』

 そんなコメントがきた。視聴者さんは少なかったけれど、始めのうちはこんな感じだ。じいちゃんはあまり気にしてない。


 俺はじいちゃんとスイカを縁側で食べていた。甘くて川の水で冷やしたスイカは格別に美味しかった。

 「裏山の探検をしながら、生配信しようか……?」

 じいちゃんがスイカの種を庭へ飛ばしながら、俺に話しかけてきた。じいちゃんから配信のことを言ってくるなんて珍しい。

 「いいね! 面白そう!」


  冒険をするみたいで、楽しくなってきた。俺は準備をするために急いでスイカを食べた。

 たしか裏山はじいちゃんの家の持ち物だけれど、広すぎてあまり手入れが入ってなかったはず。俺はサンダルからスニーカーへ履き替えた。

 「一真――! 準備できたら行くぞ」

 「は――い!」

 俺は道具を持ってじいちゃんの後をついていった。


 「じゃ、始めるよ――! いい?」

 じいちゃんは半そでシャツに水色の作業着ズボンを着ている。袖から出た腕は、野菜作りなどで鍛えた筋肉が凄かった。

 「いつでもいいぞ」

 そんな軽い感じで、裏山へ向かった。


 動画をまわしてから解説する俺。

 『今、じいちゃんの家の裏山を孫の俺と探検しに来てます!』

 タイトルは【じいちゃん、代々守ってきた裏山を探検する!】にした。何人か、興味のある人が見に来てくれている。

『何もないかもしれないけれど、ちょっとした冒険を味わってくださいね!』

 ちょっと先に控えめに言っておく。


『お――! すごい自然がいっぱいですね!』

 家の裏は、ご先祖様から受け継いだ山だ。自然そのままなので都会の人は新鮮なのだろう。コメントをくれた人がいた。


 じいちゃんと山に入って進んで行くと、生い茂った木々のせいで視界が暗くなった。

『これからじいちゃんと一緒に、何か探していきます~! うまく撮れていますか?』

 話しながら、動画を撮っているけどうまく撮れているかな……?


 『大丈夫ですよ――!』

『大丈夫!』『歩いている感じが臨場感あるよ』

『wktk』


 コメントがきた。大丈夫なようだ。



















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