俺が補助魔法をかけたせいか、じいちゃんの体が光っている。
「とりゃ――!」
じいちゃんは勢いをつけて大ジャンプした。
ザシュッ――ン!
トロルの胸を切った!
ギャァァ――!
耳を引き裂くような声をトロルが出した。
「後ろからの攻撃は任せて! 炎の魔法!」
先ほどと同じく、炎の魔法をトロルに向かって放った!
ボンッ!
ギャア――――!
顔へ命中させた。
『すご! 戦っている!』
『リアル戦闘』
『うそだろ!?』
『がんばれ!』
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トロルは顔を手で覆っている。炎の魔法が顔に当たって気が逸れている。
「ええいっ!」
じいちゃんがトロルの足を狙った。
ザシュッ――!
ギャギャギャ――! ドス――ン!
トロルは地響きを立てて地面へ倒れた。
その瞬間を狙ってじいちゃんはトロルの体に乗って、胸を刀で刺した! そしてじいちゃんはすばやく刀を抜いて、大きなトロルの体から降りた。
「とどめをさしてくれっ!」
「わかった!」
ドスドスドスドス!
今度は氷の魔法をイメージして、氷の槍を作り出してトロルの体に突き刺した。
『おお――!』
『すげ――』
『倒したか!?』
『やったか?』
『じいちゃんすげ――』
『孫の魔法もすごい!』
『やったな!』
『おめ!』
『おめでとう!』
『倒した!』
『おめ――!』
:
:
もうトロルはピクリとも動かなかった。じいちゃんと俺で倒した。
「じいちゃん、ケガはない?」
心配して俺はじいちゃんに聞いた。
「ああ。大丈夫だ」
にっ! と笑ったじいちゃんはカッコよかった。
「ふ――! とりあえずいったん戻ろうかのう? 腹が減ってきた」
じいちゃんのお腹が、ぐるるるる……と鳴った。
「そうだね!」
『じいちゃんさん、カッコよかったのに腹の虫が……w』
『じいちゃん、カッコイイ!』
『お腹の音が豪快ww』
『もうお昼じゃんw 正確な腹時計ww』
『本当だw』
『じいちゃんの腹時計が鳴ったので! 今日はこの辺で配信を終わります!』
『また観に来てくれ』
じいちゃんが横から顔を出して、視聴者さんへ挨拶した。画面に向かって手を振っている。お茶目だ。
『じいちゃん、また――!』
『カッコよかったよ!』
『ゆっくり休んで』
『お疲れさん!』
『また観るよ!』
『おつ!』
『おつかれ――』
『乙!』
『お疲れ――!』
:
:
【配信は終了しました。】
俺は配信をとめた。
「戻ろうか」
「うん!」
帰りは、魔物をほとんど倒したので安全にダンジョンの外へ帰ることが出来た。不思議なことに倒した魔物たちは跡形も無くなくなっていた。
俺は帰り道、じいちゃんへ話しかけた。
「ねえ、じいちゃん」
「なんだ?」
結構長くダンジョンへいたみたいだ。朝早くからダンジョンへ入ったのに、もう太陽は高い位置にあった。
「トロルを倒したけれど、あれがボスじゃないよね?」
歩きながら言った。俺とじいちゃんは裏山から家へ帰っている。
じいちゃんは空を見て目を細めた。
「そうじゃな、封印もまだだし。……お昼ご飯は何にしようか?」
まだボスがダンジョンにいるようだ。俺は下ろしていた手を強く握った。
「……
じいちゃんは俺のきつく握った手を握ってくれた。
「一緒に……、手伝ってくれんか? 一真。嫌ならワシが何とかするが……無理強いはしない」
じいちゃんは俺にきつく叱ったことも、意地悪したこともない。危ないことや自分がされてイヤなことは駄目と教えてくれた。
そんなじいちゃんの手伝いは断らない。
「もちろん手伝うよ! ご先祖様が代々守ってきた
俺はじいちゃんに抱きついた。変わらない筋肉質の体。俺も鍛えてこんな筋肉質の体になりたい!
「こらこら! 暑いから離れるんじゃ! スイカも食べような、一真!」
「うん! スイカ、食べたい!」
俺とじいちゃんはお昼に素麺を食べて、そのあとスイカも食べた。冷えていて美味しかった。
「でもどうして
また縁側でセミの鳴き声を聞きながら、アイスを食べていた。ダンジョンのことを考えながら疑問をじいちゃんに聞いた。
「古文書に書いてあったが、どうやら
じいちゃんも俺の隣に座ってアイスを食べた。
「偶然?」
「
聖なる場所……か。
「配信しちゃったけど大丈夫かな? この場所、特定されないかな?」
「この場所の特定? ハハハハハハハハ!」
俺が言うと、じいちゃんは豪快に笑った。
「お前もわかっているだろう?」
じいちゃんは遠くを見た。
「
じいちゃんはそう言ってアイスに噛り付いた。
そうなのだ。ここは特別な場所。田所家所有の聖なる
「明日もダンジョンへ行こうね! じいちゃん!」
「おう!」
END