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夫と愛人にすべてを奪われた私は、復讐のために姿を変え、崖の底から戻ってきた
夫と愛人にすべてを奪われた私は、復讐のために姿を変え、崖の底から戻ってきた
張小汐
恋愛現代恋愛
2025年06月19日
公開日
24.2万字
連載中
⭐毎週火曜日、木曜日、土曜日の更新です。 皆様、いつもをお読みいただき、有難うございます。 9月初旬より拙作が有料配信となります。 今のうちにぜひお読みください! これからできる限り毎日更新し、皆様に楽しんでいただけるよう努力いたします。 ここからあらすじとなります 私は天宮グループの令嬢。男と駆け落ちするため家に追い出され、母は無残にも命を落とした。 彼と共に貧しい暮らしをしながらも辛くなかった、命を何度も救ったのも私だった。 それなのに彼は、私が彼と初恋を引き裂いたと恨み、お腹の子を雑種だと決めつけた。 難産のとき、彼は同意書への署名を拒み、お腹の子は命を落とし、私も死にかけた。 それなのに彼は初恋の女性と婚約した。 崖から飛び降り、彼の前から完全に姿を消して初めて、彼は本当に愛していたのが私だったと気づいた。 でも、崖の底から戻ってきた私は、もう彼を愛さない。 それなのに彼は初恋を捨て、皆の前で片膝をつき、私にプロポーズしてきた。

第1話 お腹の子を失った

岡江市


雨は三日も降り続いた。


難産で三日目を迎えた私は、お腹の中の赤ちゃんがもう動いていないことに気づき、慌てて担当医を呼んだ。


「……申し訳ありませんが、真司様のご署名がなければ、開腹手術は行えません。」


けれども真司は自分の子どもだとは認めず、もう病院に来ることもない。


私は残された力を振り絞り、ゆっくりと体を起こした。


「自分のサインだけでいい?」


手術をしなければ、お腹の赤ちゃんは命を落とすことになる。


しかし、医者は再度拒否した。


「申し訳ありません、それはどうしてもお受けできません。」


「これは命の問題よ!あなたたちはそれでも医者なの?この子を見殺しにするつもり?」


私は血走った目で医者を睨みつけ、残された力を振り絞って叫んだ。


「申し訳ありませんが、これはお規定です。」


医者の表情が一変して、足早にその場を立ち去ろうとした。


離れようとするのを見て、私は必死に彼の服を掴んだ。深呼吸をし、心の中の怒りを抑え、できるかぎり卑屈な態度で懇願する。


「あなたたちが……夫を恐れているのは分かります。でも、これは命の問題なんです。お願いします、どうか娘を助けてください!」


この病院は私の夫、氷室真司ひむろ しんじの所有する病院。

彼が許可を出さない限り、誰も手術を引き受けてはくれない。

医者は一瞬ためらったが、次の瞬間私の振り払い、そのまま背を向けて去っていった。


青ざめた細い腕は重く垂れ下がり、行き場のない無力感が胸を締めつき、息ができないほど苦しい。


真司は自分の子ども……いや、私と子どもの命をを奪おうとしている。

このまま、黙って死を待つわけにはいかない!


そのとき、ふと妹の顔が脳裏に浮かんだ。


彼女は幼い頃から私と一番仲が良かった。きっと私を助けてくれるはず。


スマホを取り出し、雪奈に電話をかけた。


今、妹こそが最後の希望。


昔、真司と駆け落ちをしたため、家族との縁を断った。母は悲しみのあまり命を落とした。父は再婚し……妹だけが今となっても私と連絡を取り続けている。





誰かが外でニュースを見ているようだ……


「今日、山徳グループの社長・氷室真司と、天宮グループの令嬢・天宮雪奈あまみや ゆきなさんが盛大な婚約式を行いました。噂によれば、天宮さんは氷室社長の命の恩人だそうです。奥様が亡くなって三年後に、二人はようやく再び結ばれたそうです……」


私は三年前に死んだ?まだ生きているのに!


私の妹、この世で唯一の家族が、どうして私の夫と婚約したの?


信じない!


その時、電話がつながった。


「お姉ちゃん、報道見たでしょ?今日は私とお義兄さんの婚約の日なのよ。あっ、間違っちゃった。もうすぐ真司は私の夫になる。ふふ……驚いたでしょ?」


手の震えが止まらないまま、私は病床から必死に体を起こした。あまりの衝撃に、もはや痛みすら感じなかった。


「どうして?」


声を発すると、喉はひどく枯れていた。


その向こうから、天宮雪奈の勝ち誇った笑い声が響いた。


「あら、知りたいの?じゃあ教えてあげる。あの頃、真司を助けたのは私よ。でもね、彼がただの貧乏人だと面倒くさいから、あなたが助けたことにしてあげたの。

でも、予想外だったわ。彼は私に惚れたのよ。

だから仕方なかったの。真司が好きなのはあなたではなかったから、真司が好きなのはあなたじゃなかったから、私はお酒を使って、既成事実を作らせたの。それからあなたに駆け落ちを勧めたのよ。

まさか真司が氷室尚人の養子だったなんてね。完全に私の見誤りだったわ。でも変わらず私に夢中なのよ、彼は。

責めるのなら、自分を責めたら?旦那の心をつかめなかった無能な女!」


私は目を閉じ、歯を強く食いしばった。彼女の言葉はまさに晴天の霹靂。


雪奈の一言一言が胸に突き刺さってくる。


しばらくして、ようやく目を開け、視界は痛みで歪んでいた。


「あなたは……私の実の妹なのに……!」


「実の妹?何を勘違いしているの?私たちは父親が同じなだけで、異母姉妹よ。今の天宮家の奥様こそ私のお母さん。あなたの母親がもっと早く死んでくれていたら、私たち三人はとっくに家族になれてたのに。あっ、そういえば、あの女がどうやって死んだか知ってる?あなたが精神疾患で家出し、知らない男たちに輪姦されて死んだって伝えたの。そんな話を聞いたら生きていけると思う?」


電話の向こうで雪奈は悪魔のように笑っている。


「お姉ちゃん、安心して逝きなさい。」


「この悪魔ッ!許さない!絶対に許さない!あああああっ……!」


壊れてしまった私は、裸足のままベッドを飛び出し、病室を飛び出していった。


私はもともと天宮グループのご令嬢だった。あのとき、真司のために家を追い出され、戸籍からもその名を消された。今、世間の誰もが天宮家の令嬢は天宮雪奈だと信じて疑わない。雪乃の存在など、この世にいなかったかのように、誰の記憶にも残っていない。


真司が記憶を取り戻し、氷室グループの跡継ぎとして迎えられたあと、雪奈は毎日のように言ってきた。「表に出るな、真司を支える女になれ」と。


だから、世間は真司が結婚していることは知っていても、その妻が私、雪乃だとは誰も知らない。


母に会いたいと言っても、雪奈はいつも「お母さんは会いたくないって言ってる」とだけ伝い、私は信じ続けた。そして、最後に届いたのは母の訃報だった。


ひと月前、真司は突然私のお腹の子を「不倫相手の子」だと決めつけ、距離を置き始めた。私が難産で苦しんでいる三日間、一度も顔を見せなかった。


今なら分かる。あれもきっと雪奈の仕業だ!


真司はきっと真実を知らない。彼は雪奈に騙されているだけ。もし、私を本当に愛していなかったのなら……蒼汰は生まれてこなかった。そして、今このお腹にいる子もきっと、授かることなどなかったはず。


真司と話が少ないけど、夜はとても優しく私を大切にしてくれていた。

普段も贅沢を許して、家族カードは今でも私の手元にある。

だから信じている。真司はまだ私のことを愛していると。


会って話さなきゃ、真実を伝えなきゃ……!

雪奈の思い通りにはさせない!


私は狂ったように病院を飛び出した。


けれど、体力はとっくに限界を超え、お腹の中にはまだ生まれていない小さな命がある。


そう遠くへ行かないうちに、私は道路に倒れ込んだ。


それでも諦めず両手で地面をつかみながら、必死に前へと這う。背後には、鮮やかな紅が滲み広がっていた。雨が容赦なく降り注ぎ、それを洗い流そうとしても、その色だけは、決して消えなかった。


雨は止む気配もなく無慈悲に体を叩き続け、まるで私の命を削るように。


体はどんどん重くなり、呼吸も浅くなる。もう、動けない。


私は絶望に包まれながら、空を見上げた。降り続ける雨が、だんだんとお母さんの顔に変わっていく。優しく微笑むお母さんが穏やかな声で言った。


「雪乃、どうしてお母さんに会いに来てくれないの?」


その瞬間世界は完全に崩れた。


下から熱い血が溢れ出し、命の温もりが冷たさへと変わっていく。

腹部の痛みはまるで何かに引き裂かれるようで、呼吸さえもままならない、今にも窒息しそうだ。


泥水を含んだ雨が喉に流れ込み、鉄のような血の味を感じた。


それは、裂けたような下半身から溢れ出る血だった。道の上を這いながら、それは雨水と共に小川となり、排水溝へと吸い込まれていった。


雪奈の声がまるで錆びたノコギリのように、ぼやけた意識を何度も引き裂く。


破水の温もりは、すでに冷えきった身体には感じられない。顔に降り注ぐ雨は細かく尖った針のように刺さる。陣痛が波のように押し寄せ、私をより深い闇へと引きずり込んでいく。


痛みに呻きながら、ふと私は、和傘を手に持って走る幼い自分を見かけたようで。


傘の骨が折れ、雨がすべての光を消していった。


道路に引っかいた指の跡には、五本の血の線が残る。顔を濡らすのが雨なのか涙なのかも分からなかった。でも、生かさなければならない。娘を生かさなければならない。


最後の力を振り絞ったとき、肋骨が内側から押し割られるような痛みが走った。「ブチッ」という音と共に、小さな命が私の体から生まれた瞬間、世界が静まり返った。


私は震える手で、雨と血に濡れたセーターをそっと解き、小さな体を胸に抱きしめた。


ほんの少しでも、自分の体温で娘の体を温めようとした。


もう限界だ。


視界がぼやけていく中で、私は確かに見た。

腕の中の子が私に微笑んでいるのを。


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