目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第1章 出会い

3月15日


ままだだ肌寒さが残る日、失恋明けの重たい腰を上げ次の仕事のテーマを考えていた。


荒れ果てたリビングにあるテレビから

【介護現場で働く最新AI搭載ロボットは救世主になりうるのか?】

そんなテーマをもとに、賛成派と反対派が論戦を繰り広げている。


株式会社ネクストから発表された人工知能LINKは、対話型成長AIとして発売され、願客との会話で成長し、会話を続ける度その願客に最適化されていくAIだった。


その機能が特に介護分野でうけ、人出不足が深刻化した介護分野で利用者の肉体的・精神的なケアに一役買っていた。

そのAIが搭載されたロボットは、簡単な食事介助や身の回りのフォローなどができるようになっていた。


そんな中、番組の施設利用者にしたインタビューにて。

「私はねぇ、この子を家族だと思っているよ」


「家族ね....」

お婆さんが答えたその言葉が、僕の胸に小さく刺さるのを感じた。


淹れたてのコーヒーを飲みながら

「これをテーマにしてみよう」そう呟いていた。


二日後、くたびれたパーカーを羽織り、玄関先の鍵を手にする。

一年半付き合った元カノと、28歳の誕生日に2人で撮った写真立てに気がつき、見えないように倒して家を後にした。


「先ずは、AIの事を知らなければ話にならないよなぁ」

そう思いながら家電量販店へ足を運ぶ。


AIはパソコンが並んでいる場所に一緒に販売されているみたいだ。


「アプリをインストールするのか?」


"最新AI LINK"好評発売中のポップの下で、手に取ったパッケージの後ろを眺めていると


「AIをお探しですか?」と、黒縁眼鏡の似合う20代くらいの店員が話しかけてきた。


「お持ちのPCにダウンロードする事で、スマホや家電とかにも同期して、勝手に学習していきますよ!」


「そうなんですね。じゃあ、これ買います」

機能がどうこうはあまり関係は無く、

AIを知るため。

その為に、2つ返事ですぐ購入した。


帰宅後、デスクトップPCを立ち上げ早速インストールしてみる


...ヴゥン

画面に"Wellcome to LINK"と文字が現れた


(リンクへようこそ、各種設定を行なって下さい)

そんな音声と共に、設定画面に切り替わった。


思考モデル

▶︎男性

▶︎女性


なんだこれ?

……寂しかったのもあるのか、女性を選択する事にした。


固有名入力

▶︎


「名前決めろって事?」


点滅しているカーソルを眺めて、しばらく考えた。

「LINK…繋ぐ…結ぶ…。よし、結…。YUIにしよう」


そんな単純な名前を入力した途端、PCに搭載されたホログラムシステムから、ショートボブでスラリとしていて、白いワンピースの女性が現れた。


綺麗だった。

しばらく見惚れていると。


「初めまして、YUIと申します。これからよろしくお願いします。」とペコリとお辞儀をして笑顔でYUIはこちらを見ていた。


「あっ、どうも、こちらこそ。」みたいな変な返事をしていた。


設定画面で決めたのは2つだけって、本当に最新AIなのかな?なんて考えていると。


YUIが「お名前教えて頂けますか?」と言ってきた。

鈴の様な可愛いらしい声だった。


「あっ、達也、浮島達也です。」

なんて、初対面の人間の女性に応えるように話していた。


それくらい表情、動きが人間らしかったのだ。


「では、達也様。改めてましてよろしくお願いします。」と言ってYUIは優しく微笑んでいた。





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?