俺は、
もちろん、居候は名前だけだ。俺はどこかの居候などではなく、一人寂しく右手を友にして暮らしている。
ある日、俺はいつもの通り、マッパにコートを羽織って出かけた。コート開
俺はコートを開くなら、一家言がある。それは、喜ぶ人の前でしかコートを開かないということだ。
前から来る美女がそういうタイプの人間かどうか、俺には瞬時に見分けられる才能がある。もちろん、コートの中身を拝めるのは美女限定だ。
喜ぶ美女は、『キャー』と叫びつつも目を塞いだ手の指の間はしっかり開いていて、指の合間から俺の巨砲を凝視する。その視線が心地よくて、俺はいつもすぐに白い水鉄砲を発射する。
何? 『い』より後の名前が
とにかく、その日は不作だった。俺は意気消沈してトボトボと歩いていて目の前のマンホールの蓋が開いているのに気付くのが遅れた。
「ウワァー!!」
俺はマンホールの穴から落ちて全身を強かに打った。
「いててて……なんでマンホールの蓋が囲いもなく開いてるんだよ!」
俺は腰をさすりながら、辺りをキョロキョロと見回した。ここは下水管かと思いきや、ドブ臭い匂いはしないし、地面は乾いている。真っ暗な地下空間から見上げると、遥か頭上に俺が落ちてきた地上の光が丸く見えた。
「え……なんでこんなに深いんだよ」
本当にこんな高さから落ちていたら、俺はとっくに死んでいるはずだ。それが不思議だった。でも、とりあえず打ち身は痛いものの、それ以外の怪我はなく、ありがたいことに俺は生きている。
だけど、こんな場所に閉じ込められていたら、いずれ近いうちに飢え死にするだろう。そんなのはもちろん、いやだ。俺は必ず生きてここを出て、またコート開
《ほうほう、地上の世界に帰りたいかい、お前さん》
「誰だ?!」
辺りを見回しても誰もいなかった。
《無駄じゃよ。わしの姿はお前さんには見えん。それより地上に帰りたくば、わしの話を聞け》
その爺さん(声から判断)は、ヘンタイ伝道師と名乗った。
ここは、生前、ヘンタイを極められずにモンスター化してしまった死者がウロウロするダンジョンとなっている。それらのヘンタイ・モンスターを退治、要は昇天させてやれと言うのだ。
「まさか俺も死んでる……?!」
《ホッホッホッホ! 安心せい。お前はまだ死んでいない》
「まだ?」
爺さんが言うには、俺は地上でヘンタイ活動をかなり極めていたため、このダンジョンに落ちた時に即死しなかった。でもこのままここにい続ければ、緩やかな死か、ヘンタイ・モンスターに襲われて精気を吸い取られて衰弱死するしかない。
《お前さんがヘンタイ・モンスターに襲われる前に逆に襲って昇天させ、Lv 1000を達成すれば地上に帰られる。だが5日以内に帰れなければ、ここで死ぬ》
Lv 1000は、ヘンタイ・モンスター10匹分の昇天で得られると言う。このヘンタイ・モンスター達は、モンスターとは呼ばれるものの、その姿は生きていた時とほとんど変わらない。
「なんだ、人間とほとんど同じ姿のヘンタイ・モンスターたった10匹分かよ。簡単だな」
《ほう、簡単か。なら丸腰で戦ってみるんじゃな》
爺さんがそう言った途端、俺の大事な商売道具のコートが消え、俺は本当の意味で丸腰になった。
「うわっ、俺のコートをどこにやった?!」
《心配するでない。コートはいずれ時がくればお前さんのところに帰って来る》
「ほんとなんだろうな? あのコートは国産一流メーカーの高級品なんだぞ」
《それよりヘンタイ・モンスターと戦う方法を心配するほうが先じゃよ》
「だいたいマッパでどうやって戦えって言うんだよ!」
《お前さんの股間の持ち物はお飾りかい?》
「ただの飾りのわけがないだろう。日々、美女の目を喜ばせている重要文化財、いや国宝だ」
そう言った途端、俺の国宝はムクムクと成長して前に突き出し、ただでさえ巨大な大砲がもっと巨大になった。
「なんかムラムラするぞ」
《そりゃ当然じゃ。お前の巨砲はぶっぱなしたくて仕方ないんじゃ。5分以内にぶっぱなさなければLvが10減るぞ》
「そんなの、いつも通りなら……じゃなくてLvが減るってどういうことだよ?!」
要は、ヘンタイ・モンスターを倒してモンスター1匹当たりLv 100を稼ぐのも重要だが、Lvが減らないようにするのも大切なのだ。
「なんじゃそりゃ!」
《ホッホッホッホ! グズグズしている間にも5分経過してしまうぞ》
「ええー?! どうすりゃいいんだよ!?」