——ダンジョン配信
それは今や、グルメ、アイドルに並ぶ「現代三大エンタメ」のひとつだ。
昼休みの教室で。帰宅電車の車内で。病院のロビーでも。
誰もがスマホを片手に、探索者達の命が燃え尽きる瞬間に興奮していた。
その中でも異常とも言える人気を誇るのが、
生配信番組『ザ・ダンジョンドキュメント』
人気の秘訣は、なんといってもその危険性とリアリティ。
舞台は常に生還率の低いS級以上の最恐ダンジョン。
最強の探索者、最悪のボス。 火を噴くドラゴン、血の雨、罠地獄。
そして限りなく低い生還率。
その死線のスリルに、恐怖に、絶望に、人々は熱狂していた。
でもこの番組、なんか変じゃないか?
凶悪なダンジョンボスとの激闘の最中でも画面は一度も揺れない。
音声も澄み切っている上に、スタッフの声は一才聞こえない。
構図は完璧で常にベストポジションで、カメラが耐え切れるはずもない攻撃を真正面から撮影している。
そもそもスタッフはどうやって生還しているんだ?
だからこそ俺は、疑問を持った。
「まさかこれ、”やらせ”なのか?」
「ていうか……誰がこの映像を撮っているんだ?」
そして、その疑問は、俺の人生を大きく変える扉だった。