クラスティー・トモダチコレクション
第一話:クラスティー・マンション
ある蒸し暑い昼下がり。
クラスティーは楽屋で鼻をほじりながら、次のショーの台本を考えていた。そんなとき、古びた封筒がデスクに置かれているのを見つけた。
「なんだこれ?」
封を切ると、達筆な文字が躍る。
> 『クラスティーさま
突然のお手紙、失礼いたします。
あなたにはこの町にあるマンションの管理人になっていただきたく思います。
詳細は現地でお伝えします。
ご検討くださいませ。』
クラスティーは目を輝かせた。
「マンションの管理人だって?これはいいビジネスチャンスじゃねえか!家賃だって徴収できるし、宣伝だってできる!うへへへっ!」
すぐさまサイドショー・メルを呼びつけた。
「おい、メル!今日はスケジュールを全部キャンセルだ!俺と一緒に新しい拠点を見に行くぞ!」
「まさか、また一発逆転の商売話ですか?」
「その通りだよ、メル!お前も手伝え!」
半ば呆れながらも、メルは付き従うことにした。
---
数時間後、二人はそのマンションに到着した。古風なレンガ造りの大きな建物。看板には金色の文字で「クラスティー・マンション」と書かれていた。
「へぇ、最初から俺の名前ついてんじゃねえか。気が利いてるぜ。」
勝手に上機嫌になりながら、エントランスを開けたその瞬間。
足音が響く。
ゆっくりと階段を降りてくる人物がいた。
「ごきげんよう。」
長い金髪、気品にあふれた瞳、透き通る声。
あのゼルダの伝説で有名なゼルダ姫が、そこに立っていた。
「……へ?」
クラスティーの口から、間の抜けた声がもれる。
「このたび、こちらのマンションに住むことになりました。ゼルダと申します。」
「ゼ、ゼ、ゼルダ姫!?えっ、マジ!?お、おいメル、オレ幻覚見てんのか!?」
「幻覚じゃありませんよ、クラスティー。」
ゼルダは優雅に微笑んだ。
「これからよろしくお願いいたします、クラスティーさま。」
その一言で、クラスティーの心は完全に撃ち抜かれた。
「……あ、ああ……こちらこそ……よろしく……。」
鼻の下を伸ばしたまま固まるクラスティー。
メルは大きくため息をついた。
「管理人としてより、先に恋に落ちるほうが早かったですね……。」
マンションには、まだまだ不思議な住人たちが集まり始めていた。
しかしこのときクラスティーは、そんなことはまったく気にも留めず、ただゼルダの姿にメロメロになっているのだった――。