目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第26話 新しい仲間は大人のお姉さん教師

 オレたちは、いつものメンバーに桜先生を加えてリムジンに乗り込み、オレの自宅までやってきた。玄関を開けて、お母さんにひとこと挨拶だけしてから訓練場の中に入る。


「ここが、陸人くんのお家……ドキドキ……」


 桜先生の様子がさっきからおかしい。お母さんに挨拶したときも異様にアピールしていたし、なによりゆあちゃんがずっとキレてるのも怖い……


「それじゃ、ゆあのスキルの話と、新メンバーの話をしましょうか。アトム、お茶」


 鈴が椅子に座って足を組みながら言う。


「かしこまりました。鈴様」


 アトムがお茶の準備をはじめてくれた。


「あ、桜先生、こちらにどうぞ」


「うふふ♪ありがと♪陸人くん♪」


 椅子を引くと、何故か嬉しそうにされた。座った後もニコニコとオレのことを見つめ続けてくる。


「りっくん?」


「へ?」


「りっくん!ゆあには!」


「あ!はい!ゆあちゃんもどうぞ!」


 キレられたので、ゆあちゃんの椅子も引いて座っていただいた。

 こ、こわい……何を怒っているのだろうか……


「めんどくさいわね。ゆあ、静かにしてなさい」


「がるるる……」


 とりあえず、鈴が話を進めてくれそうなので、オレも黙って座ることにした。


「それじゃ、改めて自己紹介を。わたしは双葉鈴、こっちが的場柚愛、で、せんせの王子様とかいう咲守陸人よ。よろしくね、せんせ」


「うん。こちらこそよろしくお願いします、双葉さん。私は小日向桜。これから、みんなのサポートをさせてもらいたくて、ついてきました」


「てことは、せんせはダンジョンには入らないってことよね?」


「うん。年齢的に20歳をこえたからもう入れないってのもあるけど……なにより、怖くって……ごめんなさい……」


 ペコリと頭を下げられる。


「そこはいいわ。一応確認しただけよ。大学四年生ってことは22歳かしら?」


「今は21だけど、今年22になります……陸人くんは年上でも大丈夫?」


「だ、大丈夫?とは?なにがですが?」


「もう……いじわる……」


 もじもじされてしまった。まじでなにが!?


「がるる……」


「で、年齢はいいとして、小日向せんせは、わたしたちに協力してくれる、サポート的なことを担当してくれる、ってことよね?具体的に何ができるのかしら?」


「私ができるのはオペレーターとして、ダンジョンのマッピングと、あとは装備の点検や開発なんかもお手伝いできると思う。私自身はダンジョンに入れないけど、サポートロボットを同行させてダンジョンの地図を作成できるのと、トラップの発見とかもできると思う」


「へぇ、それはすごいな」


「ホントに!?私!陸人くんの役に立てるかな!?」


「え?ええ……まぁ……」


「せんせ、落ち着いて。装備の開発ってのは?」


「あ、うん。えっとね。私、教師としての資格以外にプログラミングも専攻してるから、みんなの装備をカスタムしたり、新しい装備を開発したりとかも出来ると思うの。どうかな?仲間に入れてくれる?」


「んー、わたしはいいと思うけど?あんたたちは?」


「ゆあは反対!」


「オレはいいと思うけど」


「りっくん!ゆあは反対だって言ってるでしょ!反対反対!!」


「ゆあ、シッダウン。陸人の能力のこと考えるなら、仲間は多い方がいい。それはわかってるでしょ?」


「でもでも!」


「もしここで仲間を増やさなくって、陸人が死ぬことになったら、あんた、生きてけるの?」


「でもでも……」


「大丈夫、陸人はあんたのもんよ?」


 ちがうが?と思うが黙っておく。


「私は現地妻でも大丈夫です♪(小声)ということにしておきましょう。うふふ……」


「やっぱりゆあはいや!」


「せんせ、ややこしくなるから黙ってて」


「はぁーい♪」


「ゆあは黙らせるとして、あんたのスキルにせんせって入れれるのかしら?」


「どうなんだろ?同い年以外は試したことないけど」


「とりあえずやってみたら?」


「そうだな。ゆあちゃん、オレは桜先生を仲間にしたいと思ってる。許してくれる?」


「うー……」


「先生が仲間になれば、また強くなれる。ステータスボーナスがかなり入るからね。でも、ゆあちゃんがどうしても嫌だって言うなら、オレはゆあちゃんの意見を尊重するよ」


「それは……ゆあが1番ってこと?」


「い、1番?」


―――――――――――――――――――

とりあえず、1番だって言っておきなさい

―――――――――――――――――――


 オレがなんて答えればいいかわからずオドオドしていると、鈴がモニターに文字だけ表示して指示を出してくる。ゆあちゃんには見えないように。


「ゆ、ゆあちゃんが、1番だよ(棒)」


「な、なら……嫌だけど……我慢する……ゆあも、りっくんには強くなってもらいたいから……」


「あ、ありがとう……」


 なんかよくわからん流れだが、騙しているような気がして、めっちゃ気まずい。


「話はまとまりましたか?」


「ええ、ようこそ、チームノンデリっくんへ。せんせ」


「変なチーム名やめてもろて」


「うふふ♪やっと王子様と一緒になれるんですね♪陸人くん♡」


 桜先生が両手を顔の前で合わせながら、ウキウキした声色で見つめてきた。

 ……なんですか?その、いただきます、みたいなポーズは……


 ということで、新しいメンバーに、桜先生を迎えることになった。桜先生には、オレのスキルと鈴のスキルについて説明し、まずはクラスに加入できるか試してみることにする。


「ゆあのスキルの話、ぜんぜんできないんだけど?」


「ごめんね。このあとすぐだから」


「ぷー……」


 ゆあちゃんをなだめながら、《クラス替え》スキルを操作する。今選択できるのは、30席あるうちの5席、25席はグレーになって選択できない。選択できる空席は2席だ。とりあえず、鈴の隣の座席をタップして、〈新メンバー加入〉を選択してみる。


――――――――――――――――――

小日向桜をクラスに加入させますか?

Yes or No

――――――――――――――――――


「おお!いけそう!」


「やったわね」


 オレはそのままYESを押す。すると、いつもと違うメッセージが表示された。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

小日向桜はダンジョンに入れません。指導者として加入させますか?

Yes or No

―――――――――――――――――――――――――――――――――


「ほほう?つまりどういうこと?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

20歳以上の人物は、クラスの教育担当としてクラスに加入させることが可能です。

しかし、戦闘面では役に立たないため慎重な判断をオススメします。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ふむふむ?鈴、どう思う?」


「どうって?あんたに友達30人もできるとは思わないから、なんも考えずに加入させればいいと思うわ」


「……つらい」


「はいはい。デメリットとしては、ほとんどのメンバーを教師にすると、ダンジョン攻略に挑めるメンバーが減る、それだけよね?」


――――――――――――――――

概ね、その理解であっています。

――――――――――――――――


「だって。ならいいんじゃない?」


「わかった」


 オレは、〈小日向桜を教師としてクラスに加入させますか?〉に対してYESボタンをタップした。空席だった座席に、小日向桜という文字が表示され、名前の右上に〈担任〉という文字が入る。オレの名前の右上には〈学級委員〉と書いてあって、ゆあちゃんと鈴のところには何もないので、これは役職というやつだろう。


「加入できた?」


 ゆあちゃんが肩を寄せてモニターを覗き込んでくる。


「う、うん……」


「好感度は?」


「えっと……」


「りっくん?」


 見せていいものかと悩んだが、すさまじい圧を感じた。早く見せろ、ということらしい。


「えーっと……」


 諦めて、桜先生の座席をタップする。


――――――――――――――――

氏名:小日向桜(こひなたさくら)

年齢:21歳

性別:女

役職:担任教師

所有スキル:無し

攻撃力:3(E-)

防御力:5(E)

持久力:7(E)

素早さ:8(E)

見切り:2(E-)

魔力:0(E-)

精神力:13(E+)

学級委員への好感度:98/100

総合評価:E

――――――――――――――――


「……98」


「98?え?そんな……見せて!」


「むぐぅ!?」


 顔を思いっきり押しのけられた。


「ほ、ほんとに98もある……ほぼ100じゃない……」


 わなわなしはじめるゆあちゃん。


「やぁ〜ん。恥ずかしいですぅ〜♪」


 桜先生を見ると頬に手を当ててクネクネしていた。全然恥ずかしそうじゃない。むしろ嬉しそうである。


「が、学生を好きになるなんて!教師失格!」


 ゆあちゃんが桜先生の前に歩いて行き威嚇する。


「教師だって1人の女性です!」


 桜先生も立ち上がった。


「っ!?りっくんはゆあの幼馴染だから!」


「王子様は私を迎えにきてくれるんです!」


「また王子様とかいって!夢女きもい!」


「キモくない!自分のこと名前で呼ぶとか!ぶりっ子おつ!」


「っー!おばさん!」


「は!?はぁぁ!?なんだこのガキんちょ!ぶっころしてやりゅ!!」


「落ち着きなさい」


 Bang!Bang!


「いたい!」

「キャン!?」


 鈴がゴム弾を2人のお尻に撃ち込んでいた。尻を押さえて2人がうずくまる。地獄絵図だった。


「モテる男は大変ねぇ」


「……」


「なんとか言いなさいよ」


「……」


 オレは何を言われているのかわからないので、思考を放棄することにした。そして、思考を放棄しているオレの目の前にメッセージが表示される。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

小日向桜の加入特典として5ポイント、好感度ボーナスとして9ポイントが付与されます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 どうやら、ステータスポイントは無事、取得できたようだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?