あの夢を見たのは、これで9回目だった。不思議な夢だった。私はいつも通りに眠っただけだった。夢の世界で、目が覚めると私の周りには数人の赤ちゃんが眠っていた。そばにある本棚には、日本語ではない文字が書かれた本がたくさん置かれている。また、この世界に来てしまった…。咄嗟に逃げ出そうと私は廊下に出た。しかし、逃げようとすると、酷い頭痛に襲われ、立って歩くのも困難な状態になる。廊下を這うようにして歩く。…出口は、どこ?少し進んだ時、
「また、暴れています!」
看護師らしき人に見付かり、取り押さえられ、処置室みたいな部屋に連れていかれ、腕に注射を打たれた。
「私がここに来るのは、何回目ですか?」
私が問うと、
「9回目だよ。」
看護師らしき人がそう答えた。
「あなたは明日、こちらの方とご結婚なさるんですよ。」
…え?結婚?
看護師らしき人が、サイン済みの婚姻届らしきものを持ってきて、見せられた。この世界での私の名前?と、こちらは、誰だろう?考えてもわからなかった。
「じゃあ、一旦お部屋に戻りましょう。」
看護師らしき人二人に、支えられてまた廊下を歩く。あの、日本語ではない文字が書かれた本がたくさん置かれている部屋だ。本棚の一番上に書かれた文字を解読しようと試みる。読めたのは、
「あなたは最年少で金賞です」
ということだった。一体何のことだろう?老婆が襖を開け、お茶を持ってきてくれた。
「あの、これは何のことですか?」
「私はあんたが羨ましい。私なんか、もう98歳だよ。」
とにっこり笑う。逃げなきゃ!この世界で結婚なんてしてしまったら、この世界から抜け出せないのではないだろうか?また酷い頭痛に襲われた。携帯電話の通知音が聞こえていた。私は携帯電話を手に取り、SNSで助けを求めた。
「助けて!…ここはどこ?」
「明日、またこの世界に来てしまったら、知らない男と結婚させられてしまう!」
「どうやって帰ればいい?」
立て続けに呟いた。やがて、朝になり、夢から覚めた。携帯電話を見たら、私のSNSアカウントには、夢の中で書き込んだであろう内容が、書かれておりゾッとした。また、あの夢を見てしまったら、今度こそ私は結婚させられてしまうのだろうか。