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ダンジョンアタック!

 ラーヒブ・ダムアは罠を主軸に置いたダンジョン。

 モンスターの出現は二体。ダンジョンボスと固定のモンスター。両方戦闘の必要がないので低レベルでも罠の位置さえしればクリアできるダンジョンだ。

 そもそもここまで来るのに苦労するからね。

 主要ダンジョンを2つクリアした状態で先ほどまでいた村に戻り、クエストを受ける必要がある。運搬クエストが二つとミニゲームが一つ。

 運搬クエストも中々厄介でファストトラベルが使用不可能。特定ルートを通らないと品が腐るので失敗。運搬は二回連続で受ける必要があって、二回目を失敗するとまた一からになっちゃう。


 そして、最後のミニゲームも中々厄介で、音ゲー擬きをさせてくる。そして村一番の記録を超えなくちゃいけない。

 これも失敗したらまた一からになるの頭おかしい。難易度の高さに対してのリトライ性の悪さも相まって、地獄の門とか言われていた。

 実際にRTAにおけるADCオール・ダンジョン・コンプリート部門でも悲鳴を上げていた人が多かったほどだ。

 だからこそ、壁抜けは大発見であり、ADC部門では今でも重宝されている。Any%だとあんまり見られなくなったグリッチだけどね。


 というわけで採掘ポイントなしの遺跡型のダンジョン。地味に珍しいほうのダンジョンでもある。基本的にダンジョンは炭鉱であることが多いからね。

 眺めながら歩く。罠の位置は把握済み。

 なんなら宝箱の位置も把握している。一番欲しいのは斧カテゴリーでも有能と言われている『ロキャストの斧槍』。ロキャスト大先生とも呼ばれている武器。攻撃力はそこまで高くなくて、なんなら同じダンジョンで入手できる『カタリナの忘れ形見』という突剣の方が高いまである。

 後半で入手するには見劣りする程度の性能ではあるけど、この子が大先生とも呼ばれる理由は単純。

 このゲーム、実は悪魔特攻がめちゃくそ強い。


 この世界ってドラゴンが神々によって封印された悪魔という設定があってね。そして、ドワーフってドラゴンの子孫。だからなのか、悪魔属性が含まれているのよね。

 なので悪魔特攻武器とかはドワーフに対して大きなダメージを与えるのよね。特にこの大先生は悪魔祓い10という最上級の対悪魔性能を持っているのよね。


 この悪魔祓いって強いの。 悪魔属性からのダメージをカット。 攻撃時に周囲の悪魔属性へのダメージ。 悪魔属性からのデバフをカット。


 というのがあって、Ⅹだと、その性能が40パーセントにも達している。実際にアルラ・ニハヤ鉱山とか言うエンドコンテンツのドワーフや悪魔系などのボスに対しては必須級なのよね。

 通常攻略だと悪魔系ボスは少なくて、対ドワーフだとより便利な武器があるからねぇ。状態異常を付与する武器とかの方がダメージレートが高くてね。壁抜け判明後のRTAでも大先生はあんまり使われなかった。やっぱり振りの早くてダメージが高いカタリナの忘れ形見が優先されていた。

 それでも中盤最初のダンジョンで入手できる鞭武器を使ったグリッチの方がダメージが大きくて、やっぱり忘れ形見も忘れられた。


 エンドコンテンツをプレイする層としては一番使うのがロキャストの斧槍。その大先生がこのダンジョンにある。


 私は慣れた足取りで進む。ゲームの時とは違う視界だけど、やはり体に刻まれた記憶は変わらない。…この体じゃないけどね!!たとえ話ね。例えね。

 一歩進んでは止まり、目の前にダン!とギロチンが落ちる。キリキリと上へと昇っていくそれにツルハシの武技を使用する。


 グワンと視界が激しく上下する。私の身長よりもちょっとだけ高い位置でギロチンが止まる。ガガガと激しく揺れている。私はジャンプをする。

 ガガガガガと音を鳴らしながら加速する。これがツルハシ加速。上に行くオブジェクトに引き寄せを使うことでオブジェクトが上がるスピードを自身に保存可能になり、ツルハシを上に掲げながらジャンプを繰り返す事で加速していく。

 ジャンプの度に保存した速度は消費していくけど、普通に歩くよりも速くて、その上に罠が反応する前に進むから攻略が一気に楽になる。

 ツルハシを上に掲げながら左右に揺らしてジャンプする。一歩で10mは飛ぶ。ビャンビャンと風を切る音を置いていく。


 ポンと広い空間に入り、そのまま出る。ガシャンと後ろで扉が閉まる音が響いた。OKと私はガッツポーズを一つして、止まる。

 道中唯一の敵、ワラルド・コブラのスキップに成功。

 中からバタバタと暴れる音が響く。私は頷き、普通に歩き出した。

 実はこの先の罠、ワラルド・コブラが生きているなら反応しない。

 5周年の開発者インタビューでの話だっけ?でその理由が出ていて、実はダンジョンの入り口にいるだけで経験値が溜まっていたみたい。

 それを防ぐ為に後半の罠はワラルドを倒してから反応する様にしたみたい。でも、コンセプト的にモンスターはいらないよね。とモンスターだけを削除した。けど、ワラルドを倒してからの反応するシステムはそのままにしていたみたい。

 と、こっちだね。私は別れ道の右側へと進む。

 左は正規ルートで、右には大先生が入っている宝箱が置いている。歩いて5分。ゲームだともうちょっと短いはずなのに、リアルだと妙に長く感じちゃう。


 そこに宝箱が二つ。今からでも崩れそうな床の上に置いている。


 選択式で片方が忘れ形見、もう一つが大先生。私はもちろん、右の宝箱。

 ガチャと宝箱を開ける。中からボン!と禍々しい黒い斧槍が一つ。人の背丈よりも大きな斧槍が一つ。実はロキャストにとってはちょっと小さく感じる武器という逸話がある。

 ロキャストの姿はゲーム内で確認できるのは本の挿絵とか、絵画として存在しているけど、どれも美丈夫として描かれている。でもまぁ、故郷の逸話的には割と美ではなかった話はあるけど。

 それでもデカいのは確定だったらしい。


 私は斧槍を掴む。ガラガラと目の前で床が崩れて、宝箱が落ちていく。それを見ながら、ブンと斧槍を振るう。


「があああああああああ!!!」


 急な痛みが体全身を蝕む。私は思わず、尻餅を着いた。

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