モノトーンに統一された家具が置かれている簡素な部屋で、東雲冬夜はベッドに腰を下ろした。綺麗な襟足の長い黒髪を流し、ベッド脇においてあったヘルメットを手にする。
フルフェイス型のVRMMOゲーム機をいつものように被り、横になる。スイッチを押し、起動させてゲームの世界へと飛び込んだ。
ゆっくりと瞬きをすれば、視界にプレイヤー名:義経と表記されたステータス画面が現れる。
それから目線を周囲に向ければ、中世風な城下町の風景が広がっていた。
自分の装備を確認すべく、慣れたようにステータス画面を操作する。数度、パネルをタッチすれば、自分のアバターが表示された。
肩ほどに伸びた艶のある黒い横髪が風に揺れる。少しばかり長い襟足の髪に、白と赤を基調とした軍服のようなコート姿の青年は身長が高い。これがこのゲームでの
この世界ではプレイヤー名で呼び合うのが決まりだ。表示されている義経という名前に「適当につけてしまったな」と思う。
そんなことを考えながらバグなどの異常がないことを確認し、義経はステータス画面を閉じた。
(視界、聴覚に影響はない)
義経は城下町を眺めながらそれらを確認し、さてどうするかと考える。このVRMMO【フォーリング・スター・オンライン】は今月サービスを開始したばかりの新作ゲームだ。
様々なVRMMOが登場している中、サービスを開始したまだ日の浅いゲームである。それでもプレイヤー人口は少しずつ増えていた。
まだそんな状況なので、第一回イベントを終えたばかりの今は特に何かするというものがない。
今日は何をするかと考えて、義経は歩き出す。
「ミッションでもやるか」
レベル上げや金稼ぎにもなる依頼ミッションをすることにした。依頼ミッションを受けるのに手っ取り早いのは酒場だ。
そこには各地方からの依頼が大なり小なり掲示されている。義経は酒場のある道へと入った。
どんな依頼を受けるかと大体の内容を決めてながら、ガヤガヤと人で賑わう中を歩く。
「レベル上げを目的にするならば、モンスター討伐系がいいな。もうすぐレベル20だ、今月中には20を超えたい」
そうぶつぶつ呟きながら目的の酒場へと入れば、飲んだくれている
大きな掲示板へと向かえば、壁一面に張り出された依頼の数々。張り出し切れなかったものは受付で見れるようになっている。
掲示板に張り出されたミッションを確認しながら、手ごろそうなものを探す。
「これにするか」
義経が選んだのは東の森に出没しているモンスターの討伐であった。討伐数も多い上に経験値も良い、レベル上げに丁度良いミッションだった。
依頼書を取って、受付に渡せばミッション開始とステータス画面に表示される。
傍らではプレイヤーが何やら揉めているが、そんな彼らを横目に義経は酒場を後にした。